豊道春海も愛した味 勘兵衛饅頭 御菓子司 小島屋(大田原)

下野新聞
2021年7月23日

 幕末、大雨で箒川が氾濫し、足止めされた京都からの旅の男性を泊めると、お礼として菓子作りを教わった。この縁を機に大島勘平(おおしまかんべえ)が1855(安政2)年に創業し、売り出したのが大田原市佐久山名物の「勘兵衛饅頭(かんべえまんじゅう)」だ。

 現在6代目の恒夫(つねお)さん(61)がその味を守る。つぶあん、こしあん、きんとんの3種類。「皮には沖縄産の黒糖を使い、あんは北海道産の小豆。味は昔のままです」と語る。

 しっとりふんわりの黒糖の風味の皮。甘過ぎないたっぷりのあん。老舗の味に魅了されたファンも多い。

 実は、初代名誉市民で書道界初の文化功労者の書家豊道春海(ぶんどうしゅんかい)もその一人だ。

 春海は幼少時、生家のはす向かいにある店からの匂いに我慢できず母代わりの姉にねだって、てこずらせた。墓参帰りにはいつも土産にしていたという。

 5代目の故栄(さかえ)さんの妻・愛乃(よしの)さん(83)は「好物だったので春海さんの法事の時、引き物の注文を受け、主人が東京まで届けた」と記憶する。

 春海揮毫(きごう)の「小島屋」の看板は30年前、店の建て替え時になくしてしまったが、春海の古里の味は変わらない。恒夫さんは「先祖からの味。守り続けたい」と今、思いを新たにしている。

 【メモ】勘兵衛饅頭は1個110円▽大田原市佐久山2024▽営業時間 午前8時~午後6時▽定休日 月曜▽0287・28・0038

地図を開く 近くのニュース