《食いこ》地魚ふっくら天日干し 渡助商店(日立市) 自然の恵み、味方に

茨城新聞
2021年3月11日

2月下旬のよく晴れた日、日立市久慈町の「渡助商店」では、イワシの桜干しとカレイの天日干しの最中だった。4代目の渡辺琢裕さん(56)が、並べたイワシをすだれごと1枚ずつ返していく。

110年ほど前から干物を作る。渡辺さんは大学卒業後、東京・築地市場の水産卸会社で9年働き、家業を継いだ。

同店は、近くの久慈漁港をはじめ県内の漁港に水揚げされた地魚を昔ながらの天日干しで、手間暇をかけて加工する。「乾燥機を使わず、日光や風、気温を見ながら天日干しすると、いいあんばいに乾燥できる」と自然の恵みを味方につける。「身がふっくらしていると、県外からのリピーターも多い」

加工のメインは春から秋にかけて取れるシラス。今の時季はサヨリやカレイなどの干物を作る。イワシの桜干しを除き、鮮魚を加工する。久慈漁港の魚市場に自ら出向き、鮮度や品質の良い状態の魚を買い付ける。

夕方近くに仕入れた魚もその日のうちに下処理を施す。理由を尋ねると「子どもの頃、魚が苦手になった」と驚きの答え。「苦手だからこそ生臭さには敏感。鮮度と質の良さにこだわる。周囲には翌朝に処理しても変わらないと言われるが、翌朝では遅い。臭みのない、おいしい干物を作りたい」と思い入れがある。

手作業でイワシを下処理

イワシの桜干しは冬場に作業する。10センチほどのイワシは頭や内臓を取り除き、手開きするなど丁寧に下処理する。イワシはたれに2日漬け込む。天日干しに3日かけ、乾き具合を見ながら裏返す。たれは砂糖と塩と水だけで作るが、漬け込んだたれを煮沸してろ過するなどして加え、魚のうま味が出た深みのある味わいに仕上げる。

「天日干し白魚(しらうお)」が2020年度の県水産製品品評会で最優秀の農林水産大臣賞(沿海部門)を受賞した。イワシの稚魚のシラスとは違う、シラウオという魚の稚魚を加工した。干し上がった、真っ白なシラウオは、ふわふわでうま味もたっぷり。

加工所で直売するほか、道の駅日立おさかなセンターや日立駅情報交流プラザなどでも販売している。

■お出かけ情報
渡助商店
▼日立市久慈町2の16の11
▼直売の営業時間は午前9時~午後5時
▼(電)0294(52)3527

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