「酒どころ」茨城、輸出量4年で2倍 県が支援強化 裏ラベル、マッチング提供

茨城新聞
2021年2月7日

関東最多の酒蔵数を誇る「酒どころ」の茨城県で、地酒の輸出量が4年間で2倍に増えるなど海外展開の動きが加速している。新型コロナウイルスによる外食需要が低迷する中、県は飲み方などを明記した海外向けのラベル活用に加え、市場調査と商談を組み合わせた新たなマッチングの機会を提供するなど販路開拓支援を強める。菅義偉首相が、日本酒などの国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産登録を目指す考えを示したことで、輸出の取り組みに弾みがつきそうだ。

正しい手法で
常陸太田市の酒蔵、岡部合名会社は昨年12月、シンガポールへ輸出する「特上 松盛 大吟醸」に、日本貿易振興機構(ジェトロ)と国税庁が開発した「標準的裏ラベル」を県内で初採用した。辛口、甘口など口当たりや風味の5段階表示に加え、推奨する料理や保管温度、酒蔵や商品の特徴などを現地の言葉で記載している。

「どれだけ良い物を造って出しても、保存状態や飲み方が正しくなければ風味は台無し。初めに悪いイメージが付けば、その後に消費者が手に取ることはない」。同社の岡部彰博専務はラベル採用の理由を語る。

本来の風味や香りを味わってもらうには適切な管理が欠かせず、日本酒の飲用が日常的ではない海外市場で正しい情報を伝えることは重要だ。岡部専務は「海外の飲食店や消費者が日本酒を理解し、手に取ってもらいやすくするためにも、共通のラベルは効果的」と話す。

商流構築
主に輸出では、メーカーと販売店間に、国内と輸出先国でそれぞれの商社が必要となるなど、販売までに至る商流の構築は簡単ではない。このため、酒蔵が単独で本格的な輸出に乗り出す敷居は高いのが実情だ。

そこで県は2019年度から、アジア圏を中心に現地での地酒フェアと商談会を組み合わせた販路開拓支援事業を展開。現地の飲食店などで茨城産の地酒を提供し市場調査を行った上で、両国の商社を含めたマッチングの場を提供している。

昨年12月~今年3月には、シンガポールと台湾両国内の各8店舗で県内7~8の酒蔵の地酒を提供。県営業戦略部グローバルビジネス支援チームは「中小の酒蔵が単独で新たな商流を構築することは難しい。県が需要調査やマッチングを支え、輸出を伸ばすきっかけをつくりたい」とする。

4年前から倍増
人口減少や少子高齢化に加え、新型コロナウイルスの感染拡大による外食需要の落ち込みで、国内市場は縮小の一途をたどる。一方で、近年の日本食ブームなどを追い風に、海外では日本酒への注目も定着しつつある。

茨城は41の酒蔵(1月現在)を抱える関東地方最大の「酒どころ」。国税庁によると、18年の茨城産の清酒輸出量は、4年前の14年と比べ2倍増の14万5千リットルに及ぶ。輸出に取り組む酒蔵も同7事業者増の21事業者に広がり、全体の半数を超えた。

菅首相は18日の施政方針演説で、日本酒や焼酎のユネスコ無形文化遺産登録を目指すと明らかにし、世界的にブランド価値を高めて輸出量増加につなげる考えを示した。同チームは「大きな方針が示された。国の動きを見据えながら、輸出の取り組みを加速させたい」と話した。