《食いこ》ニコニコ珈琲(土浦市) ネルドリップ、味に奥行き

茨城新聞
2019年12月9日

ネルという布製のフィルターで抽出する、ネルドリップのコーヒーが味わえる土浦市の「ニコニコ珈琲」。店内で存在感を放つ銀色の焙煎(ばいせん)機で、マスターの松本正さん(54)が「二十四節季焙煎」と呼ぶ独自の方法でローストする。「同じ豆でも春は初々しく、秋はこくが出るように、季節に合わせて焙煎を細かく変え、ネルドリップで入れると味わいに奥行きが出て、日本の四季を感じてもらえる」

豆をひいてネルフィルターにセットし、熱湯を注ぐと、泡が出て勢いよく膨らんだ。「膨らむのは豆から炭酸ガスが出る新鮮な証拠」と松本さん。コーヒーがゆっくりとサーバーに落ちてくる。

店内はコーヒー豆や輸入雑貨、菓子などでにぎやか。バゲットにソーセージを挟んだフレンチドッグも提供する。

1995年に焙煎工場に勤める兄と松本兄弟珈琲店を開業した。「リストラといった暗い話題が相次いだころ、おいしいコーヒーを飲んで笑顔になってほしい」と、2000年ごろ今の店名に変えた。

ネルドリップとの出合いは修業した都内のコーヒー専門店。「手軽なペーパードリップに比べ、ネルドリップは抽出技術がいる」。ペーパードリップに押され、業務用のネルフィルターが手に入らなくなった現状に危機感を覚え、15年から全日本ネルドリップコーヒー協会を主宰する。セミナーを開き、技術の継承や普及に力を入れる。

松本さん自ら2年かけてネルフィルターを商品化。型紙起こしから布選び、縫製に至るまで改良を重ねた。「つちうらネル」と名付け、市内の福祉施設が製作する。

つちうらネルとともに、「土浦ブランド」の認定を受けた「つちうらブレンド」は、苦味とこく、爽やかな香りで土浦の歴史や風景を表現した。深いりのコロンビア、中いりのブラジルなど焙煎方法の違う7種類をブレンドする。

地域活性化を目指し「パリの朝市」をテーマにした「ニコマルシェ」を第3日曜に駐車場で開く。次回は15日午前10時~午後1時。09年から続き118回目。参加は焼き菓子や洋風総菜など食の店が中心。「長く続け、市の名物にしたい」と意気込む。

■お出かけ情報
ニコニコ珈琲
▼住所は土浦市下高津1の21の50
▼営業時間は午前9時~午後7時
▼定休は土曜
▼(電)029(823)0415

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