川原湯温泉・山木館 「江戸」方式で営業再開 12月にも予約受け付け
川原湯温泉で最も古い約360年の歴史があり、コロナ下の経営難で休業中の山木館(群馬県長野原町川原湯、樋田洋二社長)が、セルフ形式を取り入れて12月にも予約受付を再開することが分かった。江戸時代の宿の形態にちなみ、土間に「モダンかまど」と呼ばれるIHコンロ内蔵のかまどを置き、宿泊客にメイン料理を調理してもらう。専務兼15代目の樋田勇人さん(28)は「テーマは温故知新。江戸時代の食事文化体験ができる温泉旅館になる」としている。
同館は1661年創業。八ツ場ダム建設に伴い2013年に高台に移転した。勇人さんが祖母の実家である同館に養子として入り、切り盛りしてきたが、コロナ下で経営が悪化。全従業員を解雇して5月下旬から休業し、家族経営での旅館存続に向けてサービスを見直していた。
勇人さんによると、盛り付けや配膳など人手の必要な会席料理の提供が負担になっていた。江戸時代の山木館は湯治客に土間を貸し、客が米や野菜を持ち寄って自らかまどで調理して過ごしていたことを知り、セルフ形式を検討。休業前に行ったモニタープランで好意的な声が多かったことから導入を決めた。
館内を改修し、モダンかまどのほか、特注の羽釜とせいろを用意する。食材の下ごしらえやメイン料理以外の前菜、郷土料理は外注の調理師が担当し、宿泊客にはメイン料理のかまど調理を任せる。メイン料理は地元食材を活用した蒸し野菜や鍋とする予定。
食事以外では布団敷き、浴衣や帯といったアメニティーの準備を宿泊客にお願いする。食材や燃料費などの高騰を踏まえ、1人当たり1泊2万~3万円の価格帯は維持する。
改修費用などをクラウドファンディング(CF)サイト「キャンプファイヤー」で11月末まで募っている。常連客の協力で当初目標の100万円は達成済み。現在はセカンドゴールとして300万円を目指している。
12月にホームページをリニューアルして予約受付を再開する。勇人さんは「山木館が紡いだ360年の歴史や文化を反映させた体験型サービス。新たな客層を掘り起こしたい」と話している。