コロナ拡大で中止の古河「鷹見泉石像」展 国宝鑑賞、VRで“復活”
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い公開後8日間で中止された古河歴史博物館(歴博、古河市中央町3丁目)の特別展「国宝参上。~鷹見泉石像と古河ゆかりの文化財」が、VR(仮想現実)で“復活”した。インターネットを通じ、立体映像化した館内を歩く感覚で、古河藩家老を描いた国宝の肖像画「鷹見泉石像」を含む特別展示約70点のほぼ全てが無料で鑑賞できる。
特別展は1月9日に開幕。東京国立博物館(東京都台東区)の収蔵文化財を地方に貸し出す独立行政法人文化財活用センターの「貸与促進事業」を活用し、83年ぶりに同市に“里帰り”した泉石像や、同市の妙光寺で描いたと伝わる葛飾北斎筆「七面大明神応現図」などを公開。会期は2月7日までの予定だったが、県独自の緊急事態宣言を踏まえ、1月18日以降は展示を中止した。
VR公開は今月10日に開始。同センターが貸与促進事業の趣旨により、公開中止となった文化財を「多くの人に見てもらいたい」と歴博に協力して実現した。撮影は一般社団法人VR革新機構(東京都千代田区)が、ボランティアで1月末から2月初めに3日間実施した。
3D赤外線カメラで約3メートル先までの空間をスキャンし、データを人工知能(AI)が編集してVRを生成。歴博の立体図から閲覧したい館内の場所をクリックし、展示物をさまざまな角度から鑑賞できる。拡大も可能で、文化財を間近で鑑賞したり説明文を読んだりもできる。
特別展には8日間の公開で約1500人が訪れた。歴博によると、来館者は約半数が古河市内からで、休館以降に「何とか公開できないか」との要望が約100件あったという。
VRの公開期間は9月30日まで。QRコードか古河市ホームページからアクセスできる。歴博は今後、常設展示約150点もVR公開する方針。アクセス数によるとした上で、常設展の展示物を入れ替えた際には再撮影を行い、新たな映像を追加することも検討している。
特別展担当の永用(ながよう)俊彦学芸員(55)は「現物には及ばないが、家にいながらゆっくりと細部まで確認や鑑賞ができる。83年ぶりに里帰りした古河ゆかりの文化財を、VRの世界で堪能してもらいたい」と話した。