経済に光一筋 アニメ映画「鬼滅の刃」 人気“全集中”

上毛新聞
2020年11月4日

アニメ映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は、公開10日間で興行収入が100億円を超えるなど記録的ヒットとなり、県内で上映する5劇場には連日多くのファンが詰め掛けている。県内では同映画とコラボした蒸気機関車(SL)が運行したり、観光施設で関連イベントが開催されたりしていずれも活況だ。登場人物の衣装を作るための手芸用品や原作コミックスの人気も高まり、「鬼滅人気」はさまざまな分野に広がり社会現象化している。

上映しているのはユナイテッド・シネマ前橋、109シネマズ高崎、イオンシネマ高崎と太田、MOVIX伊勢崎の5館。各館とも上映回数を増やし、1日25回以上という異例のフル回転で上映する劇場もある。

MOVIX伊勢崎(伊勢崎市)によると、週末を中心に完売状態が続き、特に新型コロナウイルスで来場を控えていた家族連れが目立つという。高橋周太郎支配人(33)は「コロナによる損失は大きいが、鬼滅のヒットで一筋の光が差したよう」と期待を寄せる。

JR東日本高崎支社などは、信越線高崎―横川を走行する「SLぐんま よこかわ」を舞台に同映画とコラボしたイベントを12月末まで展開する。SLの特製ヘッドマークや車内装飾、声優による車内アナウンスなど映画の世界観を楽しめる。あまりの人気ぶりに、「停車駅で入場制限を設ける可能性がある」と事前告知するなど、異例の対応が必要なほどだ。

鉄道文化むら(安中市)でも関連イベントが行われ、週末を中心に多くの人が訪れている。来園者は前年同月の約2倍。運営する碓氷峠交流記念財団の中島吉久理事長(70)は「この流れを一過性にしたくない。イベントを通じて施設を知ってもらう機会になったので、お客さまにもう一度来てもらえるような独自の取り組みを展開していきたい」と意気込む。

ロックハート城(高山村)は主題歌を歌うLiSAさんのニューアルバムのフォトブック撮影場所。本人のサインを展示し、31日まで「鬼滅」の全身コスプレをした客を当日先着20人に限り入場無料にする。担当者は「主題歌に関係する施設として11月もイベントを企画している」とする。

映画の公開に伴い、原作の売り上げも伸びている。紀伊国屋書店前橋店(前橋市)では、19~25日の「鬼滅の刃」単行本の売り上げ部数は約3900冊で、映画公開前(5~11日)の約6倍に急増。岡田航太郎店長(47)は「映画をきっかけにコミックスを読む方が少なくない」と分析する。

主人公らの衣装やグッズを手作りする人もいる。登場人物の衣装の柄がプリントされた生地などを販売する手芸用品店「クラフトハート トーカイ高崎店」(高崎市)には、夏ごろから問い合わせが増えた。鈴木菜摘店長(24)は「マスクやエコバックを作ろうと、生地を求める家族連れが多い」と話している。