陶炎祭、ウェブ開催へ 笠間焼協同組合 販売促進、魅力を発信 延期で苦境の陶芸家救済

茨城新聞
2020年6月14日

 新型コロナウイルスの影響で笠間焼の祭典「笠間の陶炎祭(ひまつり)」が延期になったことを受け、主催者の笠間焼協同組合は、出店を予定していた陶芸家や組合員を救済しようと、インターネットによる作品販売の準備を進めている。同組合が主体となったネット販売は初めて。陶炎祭延期で陶芸家らの収入は減少し厳しい状況が続く中、“Web版陶炎祭”を立ち上げて販売を促し、笠間焼を全国に発信したい考えだ。特設のホームページ(HP)は今月下旬にも開設される。
 
 1982年に始まった陶炎祭は、大型連休中に開かれる陶器市。例年、来場者は50万人規模で、茨城県を代表するイベントになっている。会場の笠間芸術の森公園には200を超える陶芸家や窯元が店を出し、会期中の売り上げは年間収入の大きな割合を占めている。
 
 しかし、39回目を迎えた今年は、新型コロナウイルスの影響で初めて延期となった。陶炎祭常連の陶芸家は、頼りの収入が絶たれたため厳しい状況となっている。
 
 笠間焼のインターネット販売は、こうした陶芸家らへの救済措置の一環として同組合が企画。さらに、笠間市は新型コロナウイルスの経済対策に位置付け、事業費約367万円を全額負担する。
 
 HPの制作や掲載作品の撮影などは、同組合青年部が中心となり進められている。陶芸家で青年部長の森永篤史さん(47)と同副部長の河野カイさん(47)は「このピンチをむしろチャンスと捉え、笠間焼の素晴らしさを全国に発信したい」と前向きだ。
 
 ネット販売に参加する陶芸家は100人を超える見通しで、HP上では約900種類、約5千作品を扱うという。このほか、出品者の略歴や作風なども詳しく紹介される。森永さんは「多種多様な作品がそろうので、HPはまさに陶炎祭のような雰囲気になる。釉薬(ゆうやく)や造形、焼成などを比較して、笠間焼を深く知るきっかけにしてもらえれば」と呼び掛ける。
 
 同組合の深町明事務局長は「笠間焼にとって今年はイギリス陶磁産地との提携や、益子焼と合同で日本遺産認定を目指すなど勝負の年。ネット販売を復活の足掛かりにしたい。実際の陶炎祭についても開催に向け、模索を続けていきたい」と話している。