磯部温泉 「恋人の聖地」PR

上毛新聞
2019年10月1日

 温泉マーク発祥の地とされる磯部温泉を、「恋人の聖地」として売り出そうとする取り組みが動きだした。安中市観光機構は新名所として、温泉街の中心にある神社に恋人たちが永遠の愛を誓う「結び所」を設置。地元の飲食店や旅館などが連携し、宿泊プランやオリジナル商品などの開発も進む。これまで「愛妻湯の町」を掲げてきた伝統ある温泉街は、新たな仕掛けで若者を呼び込もうと盛り上がっている。

愛妻湯の町
 8月下旬。温泉街の中心にある赤城神社境内に設置された「結び所」で、若い男女がロープに絹ひもを結んだ。報道関係者向けに実施されたデモンストレーションの一場面だ。碓氷製糸産の絹ひもをカップルで結ぶと、「永遠に結ばれる」という“伝説”を演出する仕掛けで、若者向けの新名所をアピールした。

 磯部温泉は長年、「愛妻湯の町」を掲げてきた。恐妻家として知られ、同温泉に通った元NHK会長の阿部真之助(1884~1964年)が残した名言「恐妻とは愛妻のいわれなり」がゆえんとされる。JR磯部駅近くには「恐妻碑」が建てられているほか、碓氷川には愛妻橋が架かる。

 新たな取り組みの契機となったのは今年7月、「NPO地域活性化支援センター」(静岡市)から「恋人の聖地」に認定されたことだった。県内ではロックハート城(高山村)に次ぎ2例目で、温泉地の認定は関東初。認定を受けて市は、テレビ局に婚活イベント開催を呼びかけるなど、聖地を生かした誘客に乗り出した。

20代宿泊客増へ体験プログラム
 温泉街にある11店舗の磯部せんべいを食べ歩くツアーや砂風呂など、若い人たちが楽しめる体験型のプログラムも充実する。ライスを温泉マークにかたどった「温泉マークカレー」もインスタ映えすると評判だ。

 一方で、磯部温泉の年間宿泊客数約22万人のうち、20代は2割ほど。近年は若い観光客も増えつつあるが、依然として高年齢層が中心といい、若者の集客が課題となっている。

宿泊プラン開発
 聖地認定後は同機構に対し、報道機関や若年層からの問い合わせが増えた。依田沙希事業部長は「情報発信力の高い若者を呼び込み、多くの人に磯部温泉の魅力を伝えてもらいたい」と意気込む。ピンクや青色など7種類を500円で販売する絹ひもの売れ行きは順調といい、今後はお守りなどの販売も計画する。

 旅館「磯部ガーデン」は聖地認定を記念し、夕食時にミニホールケーキを提供する宿泊プランを開発。プロポーズなどで利用する場合、要望があればサプライズでケーキを提供する演出も引き受ける。磯部温泉組合の高野幸雄組合長は「今後の温泉地の存続を考えれば、若い人へのアピールは欠かせない」と力を込める。