《旬もの》根本漬物(水戸市) 太陽の恵み 梅干しに凝縮

茨城新聞
2019年8月25日

梅干しは伝統的な健康食品。「梅はその日の難逃れ」「梅干しは三毒を断つ」など数々の言い伝えがある。“梅の都”として知られる水戸市で根本漬物は主力商品の梅干しを作り続ける。80年以上前の創業。2代目社長の根本太涛さん(78)は50年以上梅干し作りに関わってきた。自社農園で梅を栽培し、加工まで一貫して行う。

同社は年間80~90トンの梅干しを生産する。梅は市内にある約50アールの自社農園や偕楽園、県産、東北産を使う。梅干し作りは6月半ばから始まり、約1カ月塩漬けしてから天日干しに回す。

梅雨が明けた8月上旬、日差しがよく入り風通しのよいビニールハウスでは、塩漬けした梅を天日に当てる「土用干し」が最盛期を迎えていた。日光によく当たるように一つずつ上と下を返す作業が行われていた。干して2、3日の梅はまだ黄色かったが「8月の日差しなら、4、5日できれいに干し上がり、べっ甲色になる」と目を細める根本さん。

干し上げた後、調味液に漬け、土産物として人気の「水戸偕楽園で採れた梅の梅干」や「水戸偕楽梅 みとちゃん梅干」など商品ごとに塩分濃度を調整する。

水戸藩主徳川斉昭公が考案した製法を再現したという梅の漬物「水戸偕楽園 紫錦梅」は、たたいた梅とシソの葉、塩だけで作る。しかも「偕楽園の梅でしか作らない」。

昨年新商品が誕生した。同市産梅のブランド「ふくゆい」を使った梅干しだ。味わいから包装までこだわった。水戸の土産品として押し出したいと期待を寄せる。2012年度から始まった市の「梅産地づくり事業」から生まれたふくゆいは、隣り合う木をつなげて育成期間を短縮するジョイント仕立ての栽培方法を取り入れている。同社では自社農園の梅の木を植え替え、ジョイント仕立ての栽培を始めた。

根本さんの心のよりどころは、偕楽園、弘道館を開いた徳川斉昭公が残した「種梅記」。弘道館公園に種梅記碑が立つ。梅は雪に負けず春に先駆けて美しい花を咲かせ、酸を含む実は喉の渇きを癒やし、戦用の副食として役立つので蓄えるようにと実の効用についても刻まれているという。

■メモ
根本漬物
▽水戸市渡里町1800

直売のほか、水戸駅ビル、京成百貨店でも販売。
▽(電)029(221)6153

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