東日本最古の「運慶様式」 雨引観音の金剛力士像 東京芸大調査結果

茨城新聞
2019年6月7日

茨城県桜川市本木の雨引山楽法寺(あまびきさんらくほうじ)(雨引観音)にある金剛力士像について、修復作業に当たっている東京芸術大は6日、東京都台東区の同大で記者会見を開き、鎌倉時代に活躍した仏師、運慶が確立した様式の金剛力士像の中で、東日本で最も古いとの調査結果を明らかにした。「運慶様式」が確立した13世紀前半の作で、関東地方にも運慶の影響が広がっていたことが分かる貴重な資料だという。

金剛力士像は市指定文化財。阿形(あぎょう)像と吽形(うんぎょう)像の一対で、高さはそれぞれ2メートル45センチ。表面の布が剥がれるなど傷みが激しかったため、2017年から同大が修理、調査研究を始めた。

布や彩色を取り除くと、完成当初の姿が現れ、13世紀前半の鎌倉時代に造られた運慶様式と判明した。

運慶が1197年に東寺(京都市)南大門に造立した金剛力士像はそれ以前にない新様式で、足首が細く、腰の位置が高いことが特徴。雨引観音の金剛力士像も同じ特徴があり、運慶の弟子が手掛けたとされる興福寺(奈良市)の金剛力士像にも似ているという。

県文化財保護審議委員会委員で、神奈川県立金沢文庫の瀬谷貴之主任学芸員(仏教美術史)は、運慶の弟子か影響を受けた人物が手掛けた可能性が高いとし、「平安時代の様式と決裂した運慶様式が関東に広がっていることを示すもので、希少価値の高い像だ」と指摘した。

雨引観音の川田興聖住職は「修復前後では表情が全く違い、驚き。大変貴重なものを発見してもらって感謝する。今後さらに大切に保存していく」と述べた。

このほか、阿形像の中から、室町時代の1519年に修理されたことを示す銘札や巻物などが発見された。銘札には当時、飢饉(ききん)で庶民が苦しんだことなどの社会情勢も書かれていた。同大大学院の藪内佐斗司教授は「銘札も16世紀の茨城を知る文献として極めて資料的価値が高い」と述べた。

修復中の吽形像は、7~11日午前10時~午後5時まで、同大大学美術館陳列館で公開される。入場無料。

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