隈研吾氏設計「広沢新美術館」 石が主役、新時代象徴 来春完成へ 筑西
横山大観や板谷波山ら日本を代表する作家の美術品を展示する私立美術館「広沢新美術館(仮称)」の建設が筑西市大塚で進んでいる。オープン時期は未定だが、完成は来春の予定。新国立競技場の設計で知られる建築家、隈研吾氏が手掛け、庭園整備を作庭家の斎藤忠一氏、ランドスケープアーキテクトの宮城俊作氏が担う。6千トンもの大量の石を外構に使用する「石の美術館」で、隈氏は「石を主役とした世界に類を見ない美術館になる」という。4日、整備状況の確認に訪れた隈氏に構想の狙いなどを聞いた。
-工事の進捗(しんちょく)状況は。
隈 建物は9割程度できている。後は外構だ。
-外構の石組みを入念にチェックしていたようだが…。
隈 石と建築のこのような関係の建物は世の中にない。われわれがやりたかったことは石が主役で、建築を脇役とすること。20世紀の建築は建物が主役となってきたが、これからはこの美術館のように庭が主役になる時代が来ると僕は思っている。そういう新しい時代を象徴して石を主役に据えた。現状では建物がまだ目立ちすぎているので、建物が隠れるぐらい石を高く組むよう指示した。
-せっかく設計した建物を石で隠してしまっていいのか。
隈 まさにそれがやりたかったのだ。このプロジェクトに取り掛かった時、ここに保有されていた石の量に圧倒された。こんなに大きな石が大量に並んでいる光景を目にしたことはなかった。これを生かした新しい形の「石の美術館」を造りたいと思った。石で建築が消えるのは当初からの目的なのだ。
-これまで携わってきた仕事の中でも、実験的な試みと言えるか。
隈 かなり実験的だ。これから新たに石を集めようとしても、これだけ集めることなどできない。二度とできないプロジェクトだと思っている。こんなに石を持っている人など、世界中見渡してもいないだろう。めったにないチャンスを頂いたと思っている。世界的プロジェクトではなかろうか。
-隈作品は建築単体として完結するのではなく、景観や空間に開かれ、時の流れの中で存在の意味合いを変容させ、人間との関係性によってさまざまな表情を見せると言われるが、この美術館はどのように位置付けられるのか。
隈 この美術館は庭が主役。庭は時間の経過とともに緑が育って建築がますます消える。「時間とともに成熟する美術館」と言えるだろう。建築というのは完成した時が一番で、その後は古びてくるものだが、ここはどんどん良くなっていく美術館になるだろう。
-経年変化も楽しめる美術館ということか。
隈 その通りだ。
-来訪者には何を見てほしいか。
隈 美術館の中から庭が見渡せるようになっている。展示されたアートとともに、アートと庭との関係性も楽しめるだろう。ほかでは味わえない体験ができる。おそらく世界に一つしかない美術館。世界中から人が来てくれるのではないか、と僕は思っている。
■くま・けんご
隈研吾建築都市設計事務所代表。東京大学教授。1954年、神奈川県生まれ。東京大学大学院建築学専攻修了。コロンビア大学建築・都市計画学科客員研究員などを経て90年、同事務所を設立。
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