《釣り》春の渓流 ヤマメ狙う 栃木・余笹川 「さお抜け」で一撃

春の訪れとともに渓流釣りが解禁となる。茨城県の河川では4月1日が解禁日だが、栃木県の那珂川漁協では3月1日から渓流魚が釣れる。というわけで、解禁間もない那珂川の支流、余笹川へ行ってみた。
余笹川は過去に大きな豪雨水害があり、その後の河川工事により完全に護岸が施された川となっている。しかし当時、被害が少なかった上流域は自然そのままで、今回はそこでヤマメを探すことにした。
現場に着いたのは正午。私の住む茨城県大子町ではウグイスが鳴き始めたが、こちらはまだ真冬の鳥が多い。まだ雪が残るアシ原をかき分け川に降りると、上流へ向かう足跡が続いている。午前中に来た人がいるようだ。

まだ雪が残る余笹川上流域
足跡から歩みを止めてさおを出した位置まで分かるのだが、足跡の主はルアーのようだ。上流へ約500メートル歩いたが、夏場のように魚の気配を感じなかった。
さおを伸ばし、イクラを餌に釣り始める。するとラインに魚の気配が伝わってきた。イクラに反応して仕掛けに近寄ってきてはいるが、イクラを食うまでには至らないようだ。
再び流すと、もう魚は付いてこない。先客のおかげでヤマメは警戒モードのようだ。今日の魚は手ごわい。足跡の主は、枝に遮られてさおを出しにくいポイントはスルーしたようで、そこを狙ってみる。余談だが渓流釣りではこんな場所を「さお抜け」と言う。

今回の釣果と、用意した渓流用の針
すると一撃で食った。さおを立てると枝に引っかかるので、上流側へ曲げて石ころが積み上がった岸にずり上げる。20センチくらいのヒレがぴんとしたヤマメだ。触った感じがツルっと柔らかく女性を思わせるところが「山女魚」と書くゆえんだろうと私の勝手な解釈。今日は最後に写真を撮りたいので獲物をアユ釣りの引き船に入れて歩いた。
足跡をたどってさらに上流まで歩くも、やはり釣れそうなポイントの魚は反応するが警戒して食いが悪い。ラインに付ける目印を毛糸からプラスチックの矢羽根目印に替えてみる。
流れに沈めたり、出したりして餌の流れ方に変化を付けて誘うと、やっとアタリが出た。スレた魚を仕留め、思わずほくそ笑む。手ごわい相手だが、1匹ずつ慎重に釣っていくと何とか釣果として集まった。
午後3時半、急に冷たい風が吹いてくるとヤマメは餌に付いてこなくなった。今日はここまで。ヤマメを写真に撮って流れに返し、私も来た道を帰った。(奔流倶楽部渓夢・上谷泰久)