《釣り》源流域 フライ舞う 大子・久慈川支流 観察、読みの楽しさ魅力 茨城

茨城新聞
2024年9月30日

残暑が続く中、涼を求めて茨城県大子町のベテランアングラー、岡田修さん(62)を訪ね渓流釣りに同行した。清流をさかのぼり、毛針でヤマメ、イワナを狙うフライ(毛針)フィッシングをリポートしよう。

向かったのは同町の久慈川支流の源流域。舗装道路から分かれて、車1台がやっと通れる林道をうねうねと上ること30分。車を降りてさらに10分ほど歩き、倒木や分厚い落葉に足を取られながら急斜面を川まで下りた。杉や広葉樹でうっそうとした周囲は薄暗く、木漏れ日がまぶしい。

深みと浅瀬が交互に連なる幅3~4メートルの渓流は「水が多く流れも速い。条件は悪い」と岡田さん。用意したのはコルクグリップの自作カーボンロッド7フィート8インチ。リールは1940年代英国製のビンテージ品。ラインはポリエステルのWF3番にテーパーリーダー9FT6X。フライはガ、クモ、アブ、アリ、甲虫などを模した約30種類。いずれも岡田さんお手製だ。

フライフィッシングはラインとフライだけのシンプルな仕掛けの釣り。フライに重さはないが、水に浮くポリエステルのラインに重さがあり、ロッドをしならせてキャスティングする。

川に下りた岡田さんは水際や流れの中をじりじりと進み出した。狙うのは水の落ち込み、巻き返し、白泡の脇など、深さがあってゆったりと流れ、魚が虫を捕食しやすい所。手首を固めて、肘と腕の小さな振りでキャストする。1、2投して反応がないと移動だ。

とある落ち込みの巻き返しポイント。キャストした岡田さんは微動だにせず水面を凝視。次の瞬間、魚が水面を跳ねた。たも網に取り込むと約20センチのイワナだった。茶色っぽく光る魚体に白い斑点が美しい。さらに上流へ。白泡の下でもう1匹、18センチ前後のイワナをゲット。2匹とも写真を撮ってリリースした。

最初に釣れた約20センチのイワナ

川がカーブして流れが緩やかなポイントでキャストすること3回。2度目にかかりそうだったが、魚がフライを捉えきれず逃げられた。「おそらく昨年釣ってリリースしたやつ。25センチくらいになっていた」と話す岡田さんの眼力に驚く。

フライの魅力について岡田さんは「川の流れを見て居場所を推測し、周辺の虫や生態を観察して、魚が何を食べているかを読み取り、それに合わせたフライを選択して、どう釣るか」など自然観察、読みの楽しさ、フライの選択-などを挙げる。釣れる場面を想像しながらのフライやロッドの自作も楽しいという。

晩夏の昼下がり、水と緑、イワナとの交感は一服の清涼剤として心身を癒やしてくれた。