バリスタ大会で日本一 茨城・日立の就労支援事業所 2024年にカフェ開設予定

茨城新聞
2023年11月29日

障害がある人がコーヒーを入れる腕前を競う全国大会で、茨城県日立市諏訪町の就労支援事業所「諏訪ひまわり」のチームが今秋、日本一に輝いた。メンバー全員が未経験だったが、試行錯誤しながら練習を重ね、本番では最高の一杯を提供。この経験を力に、2024年には地域住民の居場所となるカフェを開く。

大会は都内で9月に開かれた「チャレンジコーヒーバリスタ」(日本サステイナブルコーヒー協会主催)。技術の向上と新たな雇用創出を目的に開かれ、計10チームが出場。事前に配られた焙煎(ばいせん)豆から独自のブレンドを作り、抽出技術などを競った。

同施設のチームは「焙煎所諏訪ひまわり」。利用者の神野静香さん、小石仁美さん、河江郁美さんに、職員の阿部達郎さんも加わり出場した。

チームは老若男女が飲みやすい味を追求した「カラフルブレンド」を考案。メンバーや仲間たちの個性を色に例えて名付けた。ハンドドリップのお湯は6回に分けて注ぎ、味のブレを少なく抽出するのがこだわりだ。

工程を分担し、本番では笑顔を絶やさず息の合ったパフォーマンスを披露した。細かく設定した抽出の時間や湯量も正確に実行し、提供前にはこぼれたコーヒーを拭き取るなど落ち着いて対処した。

結果、ブレンド審査では2位だったが、優れたパフォーマンスが評価され総合優勝を獲得。スマイル賞も受賞した。初出場での快挙だった。

ミルや提供を担当した神野さんは「最高の演技ができた。チームだからこそできる楽しさ、喜びがあった」と回顧。抽出を支えるタイムキーパーを務めた小石さんも「自信が付いた。協力し合うことの大切さを学んだ」と振り返る。

就労継続支援B型事業所の諏訪ひまわりでは、昨年からコーヒー事業を始めた。自家焙煎した豆からドリップバッグを製造し、都内のホテルと契約するなど単価の高い仕事を実現。障害者が受け取る工賃は平均2万5千円と、県平均を1万円近く上回る。

施設は高齢者や障害者、子どもがともに利用できる「共生型サービス」を提供し、地域の拠点を目指している。開設予定のカフェについても阿部さんは「地域の人たちの新たな居場所にしたい」と語り、工賃向上にもつなげたい考え。

カフェは施設にほど近い焙煎所に併設して来年1月以降にオープン予定。サブスクリプション(定額利用)サービスを導入し、施設の利用者たちもハンドドリップで来店客をもてなす計画だ。

将来的な一般企業などへの就職に向けて、小石さんは「カフェは社会の中で力を試すいい機会。自然と会話が生まれる接客ができれば」と話し、神野さんも「いろいろな人と交流できる場所にしていきたい」と意気込む。