《食いこ》ゑびすや(茨城・下妻市) 縁育む「厄除けだんご」
茨城県下妻市大宝の大宝八幡宮の鳥居内に店を構える「ゑびすや」。1868(明治元)年の創業時から、仲見世の一つとして参拝客をもてなしてきた。七五三のこの時季は、めかし込んだ家族連れが数多く来店。名物の「厄除(よ)けだんご」をはじめ、心尽くしの甘味が、それぞれの人生の節目に彩りを添えている。
店は、代表の須永眞士さん(51)、妻の純子さん(55)、長男の雄磨さん(22)を中心に、パート従業員らで切り盛りする。仲の良い親子の連携作業は小気味よく、店内を明るい雰囲気にしている。
「厄除けだんご」は平安時代、源義家が奥州征伐の先勝祈願で、大宝八幡宮にだんごを献上した逸話に由来する。材料の上新粉は、県産のうるち米を使用。粘りが少なく、適度なこしと歯応えが特徴という。一般的な白だんごのほか、ヨモギを混ぜた草だんごも手がけている。
店内メニューのだんごは、串刺しせずに皿に盛り付け、こしあんをたっぷり塗って提供。土産用は、パックに2種類のだんごをきれいに並べ、その上にあんを塗って販売する。「派手さはない菓子だが、穏やかな甘味と歯応えが絶妙です。細く長く愛されてほしい」と眞士さん。
ほかに甘味では、すすりだんご(お汁粉)が人気。白だんご、バニラアイス、サツマイモチップなどが盛られ、温かいあんこ汁、もしくは抹茶汁をかけて味わう。
もう一つの看板メニューがラーメン。鶏ガラと豚のゲンコツ、6種類の香味野菜で取ったスープはすっきりとし、多くの支持を集める。
一方、もてなしの心を大切にしている同店。提供する抹茶は、茶道をたしなむ純子さんが自らたてている。
今月、七五三の親子が来店した際にこんな出来事があった。着飾った子どもたちがうれしそうにだんごを食べ始めところ、近くに居た常連の女性がその和やかな光景に感激。会計時に親子連れの分まで支払った。「『八幡様からの贈り物』とだけ伝えてください」。女性はこう告げて店を去ったという。
純子さんは粋な振る舞いを笑顔で振り返り、「『厄除けだんご』を通じて、お客さま同士に縁が育まれたようですね」と声を弾ませた。
■お出かけ情報
ゑびすや
▽下妻市大宝668
▽営業時間は午前9時~午後4時
▽休業日は火曜
▽(電)0296(43)3495