《旬もの》栗(茨城・かすみがうら市) 低樹高栽培で品質保つ

茨城新聞
2023年9月22日

茨城は栽培面積、出荷量とも全国一の栗の産地である。古くは縄文時代の遺跡からも見つかっている栗だが、茨城県で栽培が始まり、産地を形成していったのは1897(明治30)年前後といわれている。中でも、かすみがうら市は最も早く栽培を始めた地域として「茨城の栗」発祥の地ともいわれる。

9月初旬、同市宍倉の志士庫園芸農業協同組合(圓城寺和則代表理事組合長)では、各農家が搬入した早生(わせ)栗の選別と出荷作業に追われていた。日本で唯一、栗専門の組合として80年以上の歴史を誇り、収穫時期である9~10月は最繁忙期である。

組合選果場に集まった「志士庫栗」は選別機でM、L、2L、3Lと各サイズに分けられる。次にコンベアの上を流れていき、虫食い、割れなどを人の目が厳しくチェック。出荷基準に達しないものは容赦なくはじかれる。晴れて基準をクリアした栗は磨かれてつやつやと輝き、箱詰めされて出荷を待つ。

 

栗農家の圓城寺和義さん

志士庫栗の品質は全国の市場から高い評価を受けており、東京都中央卸売市場の大田、世田谷両市場、その他加工業者にも出荷している。

栗は通常3Lサイズまでは珍しくないが、それを上回る4L(40グラム前後)となると希少。年間120トンを出荷する同組合でも、4Lは約200キロほどだ。その中から形、色の良いものだけを厳選した「サンマロン」に至ってはさらに希少で、店頭ではなかなかお目にかかれない別格だ。同市の推奨品「湖山の宝」に選ばれ、ふるさと納税の返礼品でもある。

左上の2個が希少な4L

祖父の代から栗農家で5ヘクタールを栽培する同市宍倉、圓城寺和義さん(66)は「健全な木がよい栗を付ける」という信念の下、木同士の間隔を5メートル前後とし、広範囲からの養分吸収を促す。成長を一定の高さで止める低樹高栽培をすることで、一本一本が太陽光を十分浴びて木の成長、実の充実が進む。有機肥料を施し、除草を欠かさず、害虫を防除し、丁寧な剪定(せんてい)で栗の健全性を保つ。「寒暖差が大きいと実が充実し、甘みも増す」のだという。

そうして丹精を込めても、一晩の台風で駄目になったり、天候不順で望んだ品質に届かない場合もある。収穫作業は人力が頼りで、「正直大変に思うときもある」と言うが、収穫シーズンにはパートを雇い、夫婦2人で「なんとかやってきました」と屈託がない。

同組合ではいま、早生品種の「丹沢」を出荷中だがシーズンが深まるにつれて中生(なかて)の「筑波」、晩生(おくて)の「石鎚(いしづち)」と変わる。違いを味わうのも楽しみだ。

■メモ

▽志士庫園芸農業協同組合の住所は、かすみがうら市宍倉4449の3
▽出荷は9~10月(土曜定休)
▽価格はいずれも1キロ当たり、普通栗M500円~同3L1800円。利平栗M850円~3L2000円。ぽろたんは利平栗に同じ。
▽注文、問い合わせは同組合(電)029(897)0211