道の駅、進化続け30年 登録、茨城県内16カ所に 地域振興へ個性磨く

茨城新聞
2023年9月9日

道路沿いの憩いの場として親しまれる「道の駅」は、建設省(現国土交通省)の登録制度が始まってから、今年で30年を迎えた。全国で整備が進み、茨城県内も16カ所に増加。休憩する立ち寄り先から目的地へと進化し、地域振興を担う存在に。子ども向けの遊具を充実させたり、豊かな自然をPRしたり、個性を磨く動きも目立つ。

■年間集客
同県筑西市川澄のグランテラス筑西は2019年7月、国道50号沿いに開業した。物産直売所や飲食店、パン店などがそろい、年間100万人以上が来場する。

コンセプトは「3世代が楽しめる道の駅」。これを象徴する芝生広場の遊具施設は、滑り台や広々とした芝生に親子連れが集う。屋内にも幼児向けの遊具を備えたキッズスペースを構える。

8月上旬に子どもと訪れた宇都宮市の男性(43)は、インターネットで芝生広場を知った。「写真がきれいだった。実際に来てみたら、すごく良い感じ」と満足そうに話した。

市は今後、道の駅を隣接地に拡張する。駐車場不足を解消するとともに、遊具を拡充して集客力を高める狙いだ。

市道の駅拡張整備推進課の大久保勝浩課長(52)は、季節ごとの催しと違い、年間を通して集客できるのが強みとする。「筑西市きってのにぎわいの場」と自信をのぞかせる。

■防災基地
道の駅は全国各地で増え続ける。

道の駅の登録制度が始まったのは1993年4月。当初の登録は103カ所だったが、8月10日現在で1209カ所まで拡大した。茨城県内でも2021年に道の駅かさま(笠間市)、23年に道の駅常総(常総市)がオープンするなど16カ所に増えた。

国土交通省の推計では、新型コロナウイルス禍前の年間利用客が全国で2億人以上、売上高は約2500億円とされる。新たなインバウンド(訪日客)観光拠点として、さらなる集客にも期待が高まる。

役割も多様化している。

同県大子町池田の奥久慈だいごは、21年に県内でただ一つの「防災道の駅」に選定された。災害時の広域拠点として、緊急物資などの基地機能や復旧・復興活動の拠点を担う。

町と県は、旧町役場庁舎を解体した跡地でも防災道の駅を整備する方針だ。町は観光交流施設とイベント広場を構え、にぎわい創出につなげる。

■観光拠点
茨城県内で最初に登録された道の駅は、今なお存在感を見せている。

同県城里町御前山の道の駅かつらは、登録制度で認められた第1号の一つ。1992年に開業した特産品直売センターかつらを母体に、農産物などの産地直売を軸に食堂などを運営する。

山や川に近い自然豊かなロケーションが魅力で、多くのキャンパーや登山者も取り込む。谷津安男店長(57)は「田舎の雰囲気を味わいに来る人が多い」と説明。従業員も地元の方言で接客するようにしているという。

登録から30年、転機を迎える。近くの那珂川大橋の架け替えと連動し、隣接地への移転建て替えが進められる。谷津店長は「新たな地で店の特色を生かす」と意欲を示す。

県内の道の駅について、筑波総研(同県土浦市)の山田浩司主任研究員は「観光拠点としての位置付けが強い」と指摘。増加傾向にある中、新たな発想で顧客を取り込む重要性に触れ、「地域振興の拠点として、選ばれる道の駅を目指す必要がある」と話した。