中世城館 新たに300確認 茨城県内1135カ所に 県教委調査
茨城県教委は県内の中世城館を5年かけて調査し、新たに約300カ所の存在を確認した。過去の調査や文献で分かっていた城館跡と合わせて1135カ所を特定し、報告書をまとめた。担当者は「把握されていなかった遺跡がこれほどあるのかと驚いた。県民や研究者に広く知ってもらいたい」としている。
調査は2018年度から5カ年計画として県内全域で行った。調査報告書「茨城県の中世城館」(A4判・484ページ)は、新たに確認された約300カ所を含む計1135カ所の城館跡を地図に掲載。立地環境や現況のほか、曲輪(くるわ)や土塁といった残存遺構なども示した。
このうち、水戸城(水戸市)や真壁城(同県桜川市)、小田城(同県つくば市)など673カ所については、当時の姿をイメージできるように、城の範囲や構成を示す縄張り図を使い、時代背景や城の規模などを紹介している。
茨城県域では平安時代から戦国時代にかけ、佐竹氏や小田氏、真壁氏など戦国大名と呼ばれる武家領主が割拠し、勢力図を塗り替えており、当時の城館跡が多数見つかっている。
県教委文化課の担当者は「目まぐるしく変動する時代の中、城館は戦術的・戦略的な拠点となったほか、統治の中心や武士の生活の場として機能していた」と説明。「山城や平城など、起伏に富んだ地形を利用したバラエティー豊かな軍事的な要塞(ようさい)である城館を築いた」とする。
調査委員会(委員長・高橋修茨城大教授)は専門家や市町村教委の職員らで構成し、茨城城郭研究会など郷土史研究の団体・個人も協力。調査員が古文書や軍記物語などの文献史料を基に、県内全44市町村で現地調査した。
県教委は1985年、約430の城館跡を調査し、約250カ所の城館について解説した報告書をまとめている。30年以上が経過したことから今回新たに調査した。
報告書は一般販売はしていないが、ウェブサイト「全国遺跡報告総覧」(奈良文化財研究所)で公開している。県内の図書館や歴史民俗資料館に順次配布。調査結果の報告会の開催も検討している。
同課の担当者は「身近に城館があったことを知ってもらい、地域の歴史を知るきっかけになってほしい」と話している。