国重文、笠間稲荷の本殿屋根修繕 茨城 25年完了見通し 銅板葺き解体、腐食部交換

茨城新聞
2022年12月30日

茨城県笠間市笠間の笠間稲荷神社(塙東男宮司)は、国重要文化財の本殿の屋根に木の腐食などが確認され、12月中旬、修繕工事を開始した。江戸時代末期の安政・万延年間の建築で、全面的な修繕は初の試みとなる。同神社によると、1月下旬に仮屋根をかけて、現状の「本瓦形銅板葺(ふ)き」や下地を全て解体し、腐食した部材を取り換える。全工程の完了は2025年3月を見込んでいる。

社伝によると、神社の創建は651(白雉2)年とされる。本殿は入り母屋屋根の総ケヤキの権現造りで、江戸末期の1854~60年に建てられた。同年の棟札には、笠間藩主の牧野貞明(貞直)が施主となり、真壁郡大曽根村(現桜川市)と笠間高橋町(現笠間市)の大工棟梁(とうりょう)が携わったとある。

本殿の周囲には、時の名匠による優れた彫刻が施されている。「三頭八方睨(にら)みの龍」「牡丹(ぼたん)唐獅子」は、下総国猿島郡猫実村(現坂東市)の後藤縫之助(ぬいのすけ)(縫殿之助)の手による。「蘭亭曲水の図」は、上野国佐位郡淵名村(現群馬県伊勢崎市)の弥勒寺(みろくじ)音八(おとはち)と武蔵国埼玉郡埼玉村(現埼玉県行田市)の諸貫(もろぬき)万五郎(まんごろう)が手がけた。

建造から160年以上が経過した2021年10月、建物の軒下に水染みがあるのを神職が発見した。文化財建造物保存技術協会(東京)に調査を依頼し、現状の本瓦形銅板葺きは経年による欠失や破損から、雨水の浸入や浸水による腐食を確認。「本殿屋根の全面的な修繕工事が必要」との判断に至った。

今回の工事では、建物周囲に足場を設けた上で仮屋根をかけ、現状の本瓦形銅板葺きや下地となる「土居葺き」、野地を全て解体。この後、腐朽した部材を取り換えて復旧を目指す。

事業は国、県、笠間市の助成を受け、25年3月の完了を予定している。

同神社の塙敬比古(よしひこ)権宮司(35)は「本殿に仮屋根がかかるなど参拝者に迷惑をかけることになる。末永く保つためにも修繕事業への理解と協力をお願いしたい。神社の歴史的な一ページに携われることを光栄に感じ、しっかり取り組んでいきたい」と話している。