《食いこ》木育ステーションふぉれすたーずりびんぐ(茨城・城里町)

茨城新聞
2022年12月7日

■ねっとり甘い つぼ焼き芋

冬に近づくにつれ、恋しくなるほくほくした焼き芋。茨城県城里町下古内地区にたたずむ交流拠点「木育ステーションふぉれすたーずりびんぐ」に、今年もまた「つぼ焼き芋」の季節が巡ってきた。栽培から加工まで手がけるのは、つぼ焼き芋専門「気まぐれ店主の芋屋」の店主、井出光弘さん(51)だ。

井出さんは、約10年前からサツマイモの栽培を始めた。2011年の東日本大震災を経験し、「何が起こるか分からない時代。遊休農地を活用し、自給自足の生活を送りたい」と、本業の自動車整備業の傍ら、県立農業大学校(茨城町)の講座に通い、就農までの知識やさまざまな野菜の栽培技術を学んだ。

ひたちなか市出身で、周囲に干し芋農家が多かったことから、この町でも作ってみようと、サツマイモを選んだ。肥料や農薬、除草剤も一切使わないのが井出さんのこだわり。草を生かし、「自然栽培」で育てる。ある時、無農薬で〝奇跡のリンゴ〟栽培に成功した、農家の話に感銘を受けたことがきっかけだった。「子どもに安心して食べさせられるサツマイモを作りたい」との思いがあった。

「安納いも」「シルクスイート」…。試行錯誤を繰り返し、つぼ焼き芋に向いた、ねっとり甘い食感の品種「紅はるか」に行き着いた。今年は10月中旬に約2トンを収穫。糖度を上げるため、町内のハウス内で貯蔵しているという。

栽培にとどまらず、6次産業化に乗り出したのは手塩にかけたサツマイモの価値を上げ、廃棄を減らすためだ。井出さんは無駄なく活用するため大きさ別に焼き芋用、干し芋用、丸干し用と加工方法を変える。「焼き芋には100グラム~250グラムのサイズが最適」という。

交流拠点のカフェスペースに置かれるつぼ(直径55センチ×高さ80センチ)には、練炭で温められたサツマイモが金具でつるされ、行儀良く並んでいた。15分ごとにくるりと向きを変え、1時間程時間をかけて全体にじっくり火を通していく。

ねっとりと甘いつぼ焼き芋

 

焼き方は、石焼きやオーブンもあるが、井出さんは「つぼ焼きは皮までしっとりしておいしい。蜜が出て、軟らかく膨らんだら出来上がりの合図」と、屈託のない笑顔を見せた。販売は来年1月いっぱいまで続く。

■お出かけ情報
木育ステーションふぉれすたーずりびんぐ
▽城里町下古内1204
▽つぼ焼き芋の販売は土・日・祝日のみ。1本200~350円。イートイン可。
▽(電)029(289)4632
※平日は「ひかりモータース」(同町北方2200の2)敷地内で販売。