辻永〝ふたつの顔〟迫る 油彩と植物画110点 茨城県近代美術館
大正から昭和にかけて活躍した茨城県ゆかりの画家、辻永(つじひさし)(1884~1974年)の人物像に迫る企画展「辻永 ふたつの顔を持つ画家-油彩と植物画-」が、水戸市千波町の県近代美術館で開かれている。展覧会への出品作を中心とした油彩画と、晩年まで描き続けた植物画計110点を一堂に並べ、才能に満ちた生涯に触れる。
今展では、辻の初期から晩年にいたる油彩画50点と、自身の楽しみや心の安らぎとして描いた植物画60点を紹介している。
子ども時代を水戸で過ごした辻は、東京美術学校に進学して間もなく、頭角を現した。油彩画の見どころは、作風の変遷だ。「山羊の画家」と呼ばれた牧歌的な作品から、滞欧時代の大胆な筆触と色彩が特徴の風景画、帰国後、独自の作風を確立した明るいタッチの風景画など。辻の挑戦の歴史が展示で伝わる。
一方の植物画は、辻が描いた約2万枚のうちの一部を展示している。自宅の庭先から植物園でのスケッチなど、和紙に墨と油絵の具で描いた緻密な草花は、その美しさから「萬花図鑑」などとして出版された。
同館学芸員の乾健一さんは、「油彩画で確固たる地位を築きながら、一貫した姿勢で植物画を描き続けた。1人の画家の二つの側面を、会場で感じてほしい」と話している。
会期は12月11日まで。午前9時30分から午後5時。月曜休館。