《食いこ》藤田観光りんご園(茨城県大子町) 品種の個性生かすパイ

茨城新聞
2022年11月3日

JR常陸大子駅から車を走らせること約10分。茨城県大子町の丘の上にリンゴ畑が広がる「藤田観光りんご園」がある。同園では、リンゴ狩りのシーズンに合わせ、自家製のアップルパイ作りが忙しさを増している。「リンゴのおいしさを余すことなく使う」を信条に挙げ、品種ごとの個性を生かし、手作りしているのが特徴だ。

考案したのは、同園でリンゴの加工品開発などを手がける藤田史子さん(55)。園主の卓さん(53)と結婚後、1男1女に恵まれた。「採れたてのリンゴでアップルパイを作って、子どもたちに食べさせたい」と家庭用に作ってみたのがきっかけだった。

イメージは「若い頃、ニューヨークのカフェで食べた大ぶりのアップルパイ」。試作を重ね、2004年から販売を開始。当初は、酸味や食感のバランスが整った「ふじ」や、味と香りが別格の「紅玉」を使うことが多かったが元々のリンゴ好きが高じ、貪欲に味を追求。徐々に使う品種を増やしていったという。

現在のバリエーションは約30品種。「つがるや世界一…。加工に向かないと思った品種も試してみると、おいしかった。それぞれに長所がある」と、笑顔を見せた。

アップルパイに使われる多種多様なリンゴ

 

パイには肉厚で大ぶりのリンゴがごろっと入っている。一口頬張ると、リンゴの自然な甘さとシナモンの香り、クルミの香ばしさがふんわりと広がった。リンゴの煮崩れを防ぐため上白糖を入れ一晩置き、甘さのさじ加減をしながらコトコトと煮詰めていく。「甘みが強いものや酸味が強いもの。調理によって、良いところを引き出せばいい」品種の特性を熟知する生産者の強みだ。

これからの季節、皮も味わえる「紅玉」や酸味が強い「ジョナゴールド」、バランスの良い「早生(わせ)ふじ」なども次々に登場する。

今年本格稼働した同園内の喫茶スペース「Favorite Things(フェイバリット シングス)」では、真っ赤に実ったリンゴ畑を眺めながらパイが味わえる。「他県では大子町でリンゴを作っていることを知らない人もいる。アップルパイが産地のPRになれば」。喫茶スペースではゆったりとした時間が流れていた。

■お出かけ情報
藤田観光りんご園
▽茨城県大子町浅川400
▽営業時間は午前10時~午後4時。
▽アップルパイは1ホール3400円。ハーフサイズ1700円。アップルパイとコーヒーのセットは1100円。購入は要予約。
▽(電)0295(72)5028