国内唯一 痕跡残る「避線跡」を観光名所に 碓氷峠の鉄道遺構 安中
国指定重要文化財の「碓氷峠鉄道施設」を観光資源とする群馬県安中市で、「避線(ひせん)」と呼ばれる待避用線路の跡地を、新たな観光スポットにしようとする動きが本格化している。避線の痕跡が残るのは国内唯一とみられ、市教委は避線跡を国重文に追加指定することを目指した上、整備の方法などを検討する。
◎事故防止で明治期に設置
急勾配で知られ、1997年に廃止された信越線横川―軽井沢間は1893(明治26)年に開通。避線は、急な下り坂を何らかの理由で止まれなくなった列車が事故を避けるため、国重文を構成する丸山変電所(同市松井田町横川)付近から分岐してレールや枕木などを350メートルほど敷き、列車が自然停止するようにしたとされる。坂を利用して96(明治29)年に設置されたが、昭和初期までに廃止。現在は民有地で杉林になっている。
市教委によると、避線跡は確認できるもののレールや枕木、砕石などは見つかっておらず、廃止後に用地が民間に払い下げられた際、転用されたとみられる。市教委は本年度、調査を本格化し、すでに測量などを終了。重文化に向けて国に提出する報告書を年度内にまとめ、公有地にするため地権者と交渉を進める。重文指定が実現した後、鉄道ファンや観光客が見学できるスポットとしての保存、活用を具体化する。
NPO法人碓氷峠浪漫倶楽部(安中市)の萩原豊彦理事長は避線の廃止は列車のブレーキ技術の発達が背景にあったと指摘。「文献に残っている宮城、長野の避線は再開発で痕跡が残っていない。手つかずの碓氷峠は貴重だ」と意義を強調している。
信越線横川―軽井沢間は現在、散策できる「アプトの道」が整備され、年間約27万人が訪れる。避線跡は旧熊ノ平駅と共に重文への追加指定を目指しており、市は重文化がさらなる観光誘客への弾みになると位置付ける。
市観光課は「急勾配の難所であったことを伝えることができる。物語性がある」と期待している。
【碓氷峠鉄道施設】 旧信越線横川―軽井沢間の鉄道遺構。1993年に碓氷第三橋梁(きょうりょう)(めがね橋)が近代化遺産として初めて国指定重要文化財となり、94年に丸山変電所や同橋梁と旧熊ノ平駅をつなぐ複数のトンネルなどが追加された。
【写真】現在「アプトの道」が整備されている旧信越線横川―軽井沢間の丸山変電所(左)の付近。「避線」は左奥に延びていた
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