《山里の養蚕郷 赤石・重伝建選定10年》文化継承 むしろ編みや民話語り

上毛新聞
2016年9月9日

重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)の中之条町赤岩地区に残る、3階建ての養蚕家屋。家主の関駒三郎さん(84)は、2階で地元の伝統文化を一人の女性に引き継いでいた。
「そうそう、繊維の強さが均等になるように」「作家さんだけに筋がいいね」。相手は、地域おこし協力隊として6月に横浜市から移住し、町六合支所に勤務する古川葉子さん(30)。関さんはわらで作る敷物の「ねこ」や、ミョウガの繊維で作るむしろの編み方を指導した。

 
2人の出会いは昨年5月。古川さんは「中之条ビエンナーレ」にアーティストとして参加した。関さんが採れたての新鮮野菜を届けたり、養蚕や農業で使う道具の作り方を教えたりするうちに交流が始まった。
古川さんは関さん宅に通い、ねこやむしろの作り方を覚えた。作る人が少なくなる中、若い世代が技術を受け継いだことで地区の伝統文化は生き続ける。
とつとつとした語り口が、会場の人たちを民話の世界に引きずり込んだ。8月下旬に町ツインプラザで開かれた町文化協会の研修発表会。協会の歴史部門に所属する「六合の文化を守る会」の語り部が、地元の物語を発表した。

 
100を超えると言われる旧六合村地区の民話を継承する同会の活動は、赤岩の文化発掘や継承に一役買っている。赤岩の民話で有名なのは、江戸時代の蘭学者、高野長英の隠れ家とされ、代々医者だった湯本家住宅の人が「カッパに妙薬の作り方を教わった」という話だ。
語り部3人はこの話をレパートリーとし、赤岩地区で毎年9月に開かれる「ふれあい感謝祭」でも発表している。語り部の一人、黒岩いちさん(86)は「その日の会場の雰囲気で何を話すか決める。今年も地元の話を盛り込むようにしたい」と意気込む。