沼田祇園囃子 祭りの華 子ども主役 10町が囃子継承競演で高め合う

上毛新聞
2016年8月3日

ㅤ「タンタン、タン。よーい」。夕闇に包まれた沼田市街地に太鼓や笛の音、威勢のいい掛け声が響く。演奏や掛け声の主は、150年の伝統を誇る沼田祇園囃子を受け継ぐ子どもたちだ。
沼田の夏を彩る沼田まつり(3~5日)。女性が担ぐ天狗みこしが練り歩き、山車10台が競演。山車には市民や子どもが乗り込み、沼田祇園囃子を演奏する。後継者不足に悩む伝統芸能が少なくない中、早くからの普及活動が功を奏し、昔と変わらないにぎわいを見せる。
ㅤ「これが笛、これは大太鼓の『大胴』と言います」。7月、沼田小で開かれた伝統芸能教室。講師の沼田祇園囃子保存会連合会会員が、1、2年生114人に祇園囃子の歴史や特徴を説明する。その後、児童は演奏を体験。2年の樋之口元義君(8)は「みんなで一緒に太鼓をたたくのが楽しかった」と笑顔を見せた。
ㅤ祇園囃子への関心を高めてもらおうと、連合会は2002年度から利根沼田地域の小学校で教室を開いている。本年度は10校を訪ね、低学年440人に祇園囃子の魅力を伝えた。
沼田祇園囃子は江戸末期から明治初期にかけて、前橋近郊から伝えられたとされる。ゆったりとしたテンポと、音を高く調律した締太鼓の優雅な響きが特徴で、7~8人が山車に乗り、笛や締太鼓、大胴、かねを演奏。「さんてこ」「テケテットン」「吉原かんら」など6曲が伝わり、山車を持つ市内の10町が継承している。
ㅤ担い手の人数は正確には把握していないものの、連合会の大竹繁生副理事長(61)は「後継者不足はそれほど心配していない」と話す。連合会の伝統芸能教室のほか、各町それぞれの普及活動が活発なためだ。
ㅤ衰退の兆しが見られた時期もあった。1960年代ごろまで、笛の吹き手は特権的な立場にあった。技術が独占され、後進が育たなかったという。須田清七理事長(64)は「3町しか山車を出さない状況が10年ほど続いた。これではいけないと思い、笛の名手に教えを請い、みんなに伝えた」と振り返る。
ㅤ79年に山車を持つ町が寄り合い、普及と継承を目的に連合会を結成。80年に始めた演奏技術を競う競演会を機に、各町が担い手の育成に力を入れるようになった。
中心市街地で少子化が顕著になると、連合会が中心となって「町内意識」の解消を呼び掛けた。現在、多くの町が町外の子どもを受け入れている。須田理事長は「今後も普及と継承に取り組み、しっかり足元を固めて、長く続けていきたい」と力を込める。
ㅤ沼田祇園囃子は、沼田まつりの3日間を通じて会場周辺で披露。競演会は4日午後2時から本町通りで開かれる。

 
【メモ】
▽名称 沼田祇園囃子
▽指定 1995年、沼田市重要無形民俗文化財
▽伝承 沼田祇園囃子保存会連合会、役員49人
▽活動 沼田まつり、国内外のイベントに随時出演

写真:連合会や各町が受け継いでいる沼田祇園囃子(2014年8月)

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