「延方相撲」 潮来で31日 伝統継承 地域に絆

茨城新聞
2016年7月25日

県無形民俗文化財に指定されている潮来市の「延方相撲」が31日、同市新宮の鹿嶋吉田神社で開かれる。花相撲など華やかな祭礼で知られるが、祭礼当日の約1カ月前からさまざまな行事、準備が行われるのも特徴だ。特に当番区では幅広い世代が団結して、住民総掛かりで準備に取り組んでいる。300年以上も昔から脈々と続く文化遺産の継承活動を通じ、この地域の住民たちは絆を強めてきた。

今年の延方相撲の当番区は東区。3日、良く晴れた日曜日の朝、同市延方東の東区集会所に約50人の住民が集まった。土俵作りを前に、今泉宏通区長(59)は「9年に1度回ってくる当番。地区の人間関係を確かめ合う祭りを仲良くやりましょう」と笑顔で呼び掛けた。

この日は、祭礼までの間に相撲の練習などを行う土俵作りや酷家(こくや)開きと呼ばれる行事が執り行われた。土俵作りは住民総出。ワラを編んだ太い綱を土俵に埋め込み、俵を周囲に置いた。浴衣姿の役員たちと若い区民がともに汗を流し、祭礼に向けて協力し合っていた。

当番区では6月の見届け行事に始まり、神前会議、当番酷家開き、衣装そろえ、地取り祭などのほか、締め込み姿での相撲の練習など、週末を中心に行事や準備が続く。

延方地区内の14区のうち延方相撲に関わるのは、東、西、小泉、曲松、須賀、古高、新宮、下田、洲崎の9区。東区は最も戸数が少なく、最も多い小泉区の半分以下76戸しかない。そのうち約10戸は1人暮らしの高齢者だという。

今泉区長は「みんなそれぞれ自分の仕事があるが、地域への思いも大事にしている。新住民の人たちにも、若者頭たちが積極的に『一緒に相撲やろう』と声を掛け、参加してくれる人がいる」と語る。そして「当番をやれなくなる区が出たら一気に崩れる可能性もある。伝統を担う人が地域に少なくなってきて大変だが、なんとか守り続けたい」と話した。 

★延方相撲
江戸時代、潮来市徳島地区一帯では漁場を巡る紛争や、農耕地の利権論争、耕作権の問題などの紛争が絶えなかったが、1672年に江戸幕府評定所より「この地は水戸南領に属す」との裁決があり、村人は喜び合い、翌年に相撲祭を延方村鎮守鹿嶋吉田神社に奉納した。これが始まりで、江戸勧進相撲の格式を持って今日に伝えられている。