かやぶき職人、後継者育成へ 石岡・八郷地区

茨城新聞
2016年6月17日

かやぶき屋根の民家が約80戸点在し「にほんの里100選」にも選ばれている石岡市八郷地区で、「茅手(かやて)」と呼ばれる、かやぶき職人の後継者を育てる取り組みが進められている。市の関連団体が職人の候補生を募り、親方職人の下でかやぶき作業の修行と経験を積ませ、本職人を育てる。高齢化などによる職人の減少で伝統技術が途絶えることへの危機感が背景にある。市などはベテラン職人から若手への伝承リレーを進めたい考えだ。

後継者を育成しているのは、同市染谷の「常陸風土記の丘」(運営・市産業文化事業団)。かやぶき職人の候補者を常時募集し、応募者は施設の臨時職員として働きながら、ベテラン職人から技術を学ぶ。

同地区では筑波山麓に広がる農村地帯にかやぶきの古民家があり、かやぶき屋根の市内の面積密度としては全国一の多さだという。

地区のかやぶきは主に「筑波流」と呼ばれ、竹す巻きの棟や、しま模様の軒下などの技巧は国内最高レベルの技術と評される。

しかしかつては集落ごとにいたというかやぶき職人は高齢化し、県内でも数人程度にまで減ってしまった。後継者育成が急務となる中、技を途絶えさせてはならないと、風土記の丘は2006年から継承・育成事業を開始。これまで数人が、親方職人の広山美佐雄さん(85)=小美玉市=に弟子入りし、園内に十数棟ある竪穴式住居や武家屋敷のほか、依頼に応じて市内外の民家の屋根ぶきを手伝いながら、技を習得してきた。

広山さんはかやぶき職人として日本で唯一「現代の名工」(卓越技能者)に選ばれ、昨春には黄綬褒章も受章した第一人者。「1軒のふき替えは数十年に一度で、家によって屋根の形が違うので工程や作業方法が変わる。昔は見よう見まねで道具の使い方や技を親方から盗んで学んでいたが、今は詳しく指導するやり方で若者に継承している。高齢なので、伝えられることは全て伝えたい」と力を込める。

弟子入り8年目となる渡辺大(まさる)さん(35)=石岡市=は「当時の(風土記の丘)所長から誘われ職人を目指すようになった。地元の伝統文化を守っていく重責を感じて、取り組んでいる」と話す。若手の候補生を含め、新しい人の仲間入りを心待ちにしている。

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