《旬もの》愛情注ぐ純白クレマチス 長谷川園芸(北茨城市) オリジナル品種開発に情熱

茨城新聞
2021年4月21日

茨城県北茨城市の静かな山あいに、クレマチスやシクラメン、ポインセチアを栽培する鉢物農家「長谷川園芸」のビニールハウスが数棟立つ。今月初旬、ハウス内では出荷を待つばかりのクレマチスの鉢がずらりと並んでいた。同園では母の日に向け忙しさがピークを迎えるという。

花をきれいに開花させるための作業

同園を中心になって切り盛りするのは、2代目の長谷川康平さん(43)。育種家でもあり、オリジナル品種の開発に情熱を注いでいる。白色の同園オリジナル品種「北浜」もその一つ。2012年の国際園芸博覧会で見事、最高峰の金賞に輝いた。

長谷川さんは、高校卒業後、米国に2年間、働きながら園芸や農業の基礎を学び帰国。その後、法政大学文学部に入学するものの、実家の仕事を手伝ううちに「偶然が生む、園芸の品種改良が面白い」と中退して、26歳で本腰を入れた。

程なくして「北浜」が誕生した。品種改良は種の栽培からスタートした。発芽に2年最初の花が開花するのにさらに2年。北浜は計4年という長い歳月をかけて生まれた。「クレマチスは趣味の人が作った品種が多い。商品として品質をさらに上げるために、花付きや株の出来を改良できないか」との思いがあった。

500本植えた苗から、赤やピンク、白の色を付けた花を咲かせた。その中に長谷川さんが見初めた1本の苗があった。「花付き、株、色合い三拍子そろっている。残そう」。名前は北茨城市の海岸を地元の人が“北浜”と呼ぶことから名付けた。

その後、北浜の枝から枝変わりした八重咲きの花を付け、品種改良し商品化。19年、華やかな八重咲きのクレマチス「花園」が新たに誕生した。さらに昨年には、花園の中から1本だけ違う花を見つけた。一輪一輪が華やかなのが特徴で、北茨城市華川の地名とともに、広く愛されることを願って「華川」と名付けたという。

クレマチスは、圧倒的に紫色の印象が強いが、同園のハウスでは、純白のクレマチスも静かに存在感を放つ。長谷川さんは「品種改良は、変化に気付くかどうか。新しい花の姿を最初に見られるのが楽しい」と笑顔を見せた。同園が愛情を注ぎ栽培したクレマチスは、今年は東京や大阪など全国に向け、約1万5千鉢が出荷される。

メモ
長谷川園芸
▽住所は北茨城市華川町小豆畑138
▽(電)090(2456)4828
(時間帯:午前10時~午後4時)
※インターネット販売も受け付けている。

地図を開く 近くのニュース