長久保赤水の偉業、再認識を　重文記念特別展　地図類や書物、絵画も　高萩市歴史民俗資料館　

高萩市出身の学者で、日本で初めて経緯線のある全国地図を完成させた長久保赤水(1717～1801年)の関係資料が国の重要文化財に指定されることを記念した特別展が、同市高萩の市歴史民俗資料館で開かれている。地図類のほか書物や絵画など約50点を展示し、郷土の先人である赤水の足跡をたどることができる。

展示資料のうち、1768年の「改正日本分里図」は、赤水が作った日本地図「改正日本輿地(よち)路程全図(赤水図)」の原図の一つ。地形や地名に、白色の顔料である胡粉(ごふん)による多くの修正痕があり、赤水がより正確な地図を作成しようとしたことが見て取れる。

赤水が水戸藩6代藩主徳川治保(はるもり)に対し、年貢取り立ての運用で苦しんでいた農民を救うため制度の改善を求めた書「農民疾苦(しっく)」の草稿もある。赤水は農民出身者としては異例の抜てきで、治保公に学問を教える侍講(じこう)を務めていた。

北茨城市の山あいの地形や道路を描いた地図には、「花園」など現在も残る地名がある。このほか家族や知人に宛てた手紙、治保公からの贈り物などを見ることができる。

市生涯学習課の担当者は「重文を機に、高萩にこんなに素晴らしい人物がいたと広く知ってもらうとともに、郷土の先人の偉業を地元の人にも再認識してもらえれば」と話している。

特別展は11月15日まで。月曜休館。9月23～30日は展示物の入れ替えのため臨時休館する。開館は10月31日までが午前9時半～午後5時50分、11月1～15日は午前9時半～午後5時。

重要文化財に指定されるのは、赤水の複数の子孫宅に伝来した一括資料で、地図・絵図84点、文書・記録279点、典籍274点、書画・器物56点の計693点。赤水の学問の内容、交友関係、生涯の実績を考える上で最もまとまった資料群で、江戸時代中後期の文化史、地図史などの研究上に学術的な価値が高いと評価された。