銅版画家の足跡たどる 金子哲男さん遺作展 郷土の文化振興にも尽力 坂東
坂東市山の坂東郷土館ミューズで「銅版画に魅せられて 金子哲男遺作展」が開かれている。同市で終生暮らし、一昨年、90歳で亡くなった銅版画家、金子哲男さんをしのぶ企画展で、代表的な「JYOHMON」シリーズなどの作品105点のほか、遺品のカメラ、遺影などが並び、足跡をたどっている。
金子さんは1928年、現在の同市逆井に生まれた。同市内などで小中学校の教員として勤める傍ら、初めは木版画、やがて銅版画の制作を続け、88年には芸術公論賞、94年には新構造展で都知事賞を受賞した。
同展には、「縄文土偶の持つ表情は現代人の苦悩と共通する」という思想がこもる「JYOHMON」シリーズや、抽象・簡素化した表現を追求した「fantasia」、藍色に線文を組み合わせた「流」などのシリーズの作品が並び、作風の変遷がうかがえる。
芸術公論賞受賞作「☆(口ヘンに賛の夫がそれぞれ先)-II」は、土偶とみられる図像を、赤、黒、緑の3種の色違いの面を組み合わせて構成した作品で、遠い昔に思いをはせさせる趣がある。70年代初期など若い頃に、茨城の他の版画家たちと共同制作したテーマ作品集なども展示されている。
筑波山をモチーフにした作品は郷愁を誘う。座右の銘を彫った作品もあり、「一人でする勉強ハ辛抱を教える/辛抱ハ精神力を教える/精神力ハ永久の若さを与える/永久の若さは専念と熱中で出来る」などの言葉は、彫られた文字の味わいとともに、気骨ある作者の人柄をしのばせる。
金子さんは、旧猿島町文化財保護委員や町史編さん委員も歴任、郷土の文化振興にも尽力した。そちらの顔をしのばせる、地域の文化誌への寄稿論文なども展示されている。
同館の古矢智子係長は「ご自宅にはたくさんの作品が残っていて、充実した遺作展を開くことができた。長年にわたり、地域の文化振興に努めていただいた故人の足跡を振り返る機会になれば」と話している。
会期は9月22日まで。月曜休館。入場無料。問い合わせは同館(電)0280(88)8700。
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