2018世界湖沼会議in茨城 霞ケ浦、課題解決探る 水質生態系保全 行政や漁協が報告
第17回世界湖沼会議4日目の18日、霞ケ浦の抱える課題を話し合う「霞ケ浦セッション」がつくば市竹園のつくば国際会議場で開かれ、霞ケ浦を取り巻く現状や問題について集中的に議論が交わされた。行政や霞ケ浦漁業協同組合などの関係団体や企業、市民団体ら13団体の代表者が一堂に会して、霞ケ浦の水質や生態系の保全について取り組みを発表し、課題解決の方策を探った。
県県民生活環境部の桑名美恵子次長は霞ケ浦の水質について説明、アオコなどの植物プランクトンの栄養源になるリンの約2割、窒素の約5割が生活排水によるものとした。「泳げる霞ケ浦」を目指して生活排水対策を実施し、「将来的に化学的酸素要求量(COD)を湖水浴場がにぎわっていた1960年代と同じ、1リットル当たり5ミリグラム前半を目標とする」と強調。しかし、改善には「相当の時間と費用をかけて汚濁を減らすことが必要」と述べ、その上で今後は「流域の関係機関と連携を深め、情報共有や発信に力を入れたい」と話した。
さらに、霞ケ浦漁協の伊藤一郎霞ケ浦水産研究会会長がワカサギを守り、増やし育てる漁業関係者の取り組みについて説明。保護のために漁業者間の話し合いで操業時間を短くしたり、休漁日を増やしているほか、ワカサギを人工授精させ、約3億個の卵をかえして増やす事業展開にも触れた。伊藤会長は「漁業者自身が水産資源を守る取り組みを続け、後世に霞ケ浦の資源を残したい」と話した。
また、JA土浦蓮根本部会の飯田公巳さんは霞ケ浦周辺で生産が盛んなレンコン栽培について発表。会場から「肥料による水質の汚濁についての対策は」との質問に対して、「なるべくレンコンが必要なだけの肥料を使うようにしている。無駄に肥料をやればそれだけコストもかかる」と答えた。
一方、環境保全活動に取り組む市民団体などからは霞ケ浦の現状や課題について報告。北浦北部の環境保全活動に当たる鉾田市まちづくり推進会議自然環境部会の大木繁夫部会長が「カンムリカイツブリなど貴重な動植物を見ることができるのが特徴」とし、鳥獣保護区の設定や下水道整備といった水質改善の取り組みを解説した。完全無農薬の米作りやビオトープと湿地帯の遊歩道整備を紹介した大木部会長は「官民が共同で自然を守り、活用していく方法を考えていきたい」と強調した。
かすみがうら市歴史博物館の千葉隆司学芸員は「帆引き船をシンボルに新たな魚食文化を考えていく」と語った。現在では湖の恩恵を受けている当事者意識が低くなっていると指摘し、「霞ケ浦と共生するためには魚食文化の継承が必要不可欠」と訴えた。
このほか、市民団体「世界湖沼会議市民の会’18」の滝下利男副会長が湖沼会議の招致活動などを報告した。
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