《食いこ》お菓子処 ひろせ(茨城・水戸市) 子どもに和菓子伝えたい
創業100年を超す老舗の和菓子店「お菓子処 ひろせ」(茨城県水戸市)。「温故知新」をモットーに、日本の文化や四季を表す伝統的な和菓子を守りつつ、新しい素材やアイデアを積極的に取り入れる。
蒸す、焼く、揚げる-。和菓子を作る工程は幅広い。大福やどら焼き、ようかんなど長く愛される定番商品から、梅や芋、栗を使った郷土菓、焼き菓子まで幅広くそろえる。「茨城の農産物はどれもおいしく、高いレベルでの提案ができる。一点特化ではなく、日常的に和菓子を味わってほしい」と社長の広瀬雅典さん(44)。
現在は梅まつりに合わせたピンク色のパッケージが店を彩り、春を思わせる。中でも目を引くのが「動物饅頭」。上用(じょうよ)まんじゅうをベースにウサギやパンダ、コアラ、サル、クマなど14匹の顔が並ぶ。手軽にスナック菓子などが買え、いつでも食べられるだけに「小さな頃から和菓子に親しむ習慣を」と考案した。
材料は山芋粉と米粉、砂糖。味はもちろん、色の出し方やデザインで試作を繰り返し、完成まで10年かかった。あんを包むまでは機械で、その先は1点ずつ職人たちが手作業で仕上げる。
それぞれに表情や色、パーツが違って手間はかかるが「お菓子を囲んで会話が弾んだり、家族団らんのきっかけになればいい」と話す。こしあんをきめ細かくしっとりとした生地で包み、小ぶりで上品な甘さ。子どものいる家庭や手土産、お茶席にも活用されるという。
四季を反映する店の菓子作りは大正時代から引き継がれ、広瀬さんで4代目。現在地に移転オープンして約15年になる。オンライン販売も取り入れるが、基本は客と触れ合う店舗販売。見よう見まねで作ったお菓子の味を家族に褒められ、「飛び上がるほどうれしかった」子ども時代の記憶が今につながる。
「和食」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録され、10年が過ぎた。食が多様化し、広瀬さんは日本の歳時が家庭からなくなってしまうことを心配してきた。「和菓子は日本の食の一部。和食とともに和菓子を根付かせたい」。店の商品の一つ一つに、そんな願いを込めている。
■お出かけ情報
お菓子処 ひろせ
▽茨城県水戸市曙町10の8
▽営業時間は午前9時~午後6時
▽休業日は毎週木曜(イベント時変更あり)
▽(電)029(257)8339
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