豚皮でレザー製品開発 未利用の部位活用 茨城・坂東の山西牧場
食用には使われない「豚皮」を革小物素材の「豚革」へー。茨城県坂東市沓掛で養豚業を営む山西牧場は、自社で育てた豚の皮を活用したレザー製品を開発した。倉持信宏社長(32)は「こだわって育てた豚を、皮まで余すことなく自社で有効活用したいと考えた。使い込むほどに表情の出る製品をぜひ手に取ってほしい」と呼びかける。自社サイトなどで販売中だ。
倉持さんは同牧場の3代目。餌にこだわって育てた豚は柔らかな赤身と脂身のバランスがよく、高品質の銘柄豚として定評がある。「消費者と直接つながりたい」と、2019年に自社農場ブランド「サンエモン」を立ち上げ、自社生産、直売にも力を注ぐ。精肉やベーコン、カレーなどの加工品に今春、新たに加わったのが革製品だ。
倉持さんによると、海外では皮ごと豚肉を消費するため、「豚革」は沖縄県を除き皮を食べる習慣のない日本ならではの素材だという。薄く軽く柔らかで、牛革よりも通気性に優れ、9割が海外へ輸出されている。「牧場発の豚皮を製品化して豚革の価値を高めたいと思った。精肉や加工品と違って、日用品として消費者の手元で長く愛されるものを作りたかった」と倉持さん。
豚皮が豚革になるためには、さまざまな工程が必要という。毛を除き、腐敗の原因となるたんぱく質や脂肪を取り除き、薬品や植物などを使ってしなやかさをもたせる「なめし」「染色」などを経て、ようやく豚革になる。
工程を一から勉強したという倉持さんがサンプルを持参して相談したのは、日本の職人による革製品のみを取り扱う専門店「スナワチ」(大阪市)の前田将多代表(47)だった。前田さんの指導を仰ぎ、タンナー(なめし業者)や仕上げに関わる専門業者など多くの協力者を得て、製品化にこぎ着けた。豚革の特徴である毛穴や小さな傷もそのまま生かしている。商品は財布やバッグなど全4品。約2万~4万円近くで販売する。
植物タンニンでなめし、オイルとワックスを革の芯まで入れ込んだ財布やバッグはつやのある仕上がりで、前田さんも「華やぎのある製品に仕上がった。当店でも取り扱っている。評判は上々」と太鼓判を押す。生産者の顔が見える豚革として、倉持さんは他のメーカーへの素材提供も検討している。