《食いこ》茶葉香るクラフトビール さかい河岸ブルワリー 茨城・境
茨城県境町の「道の駅さかい」の一角に立つビール醸造所「さかい河岸ブルワリー」。消毒をして仕込み中の醸造所に足を踏み入れると、香ばしく、甘い香りが胸いっぱいに広がった。
代表の安井健さん(43)は、大きな鍋に入った麦芽とお湯を木べらで混ぜていた。麦芽中のでんぷんを糖に変える作業。機械化するのが多数派の工程だという。「目で色を見て、鼻で香りを感じる。その場で味の確認もでき、変化に気付きやすいので、非効率でも手作業にしている」とこだわりを語る。
定番ラインアップは特産品のさしま茶を使った「さしま茶エール」や、王道の「ペールエール」など6種類。季節ごとにイチゴやトマトを使ったビールも販売する。
「境町らしいビールが造りたい」と考案したさしま茶エールは、お茶のさる山野口園(茨城県境町)厳選の茶葉を使用。さしま茶とホップの香り・苦みの両方を感じられる絶妙なバランスで、飲むとほっと一息つける不思議なビールだ。ペールエールは、ビール好きの安井さんが「自分のイメージするクラフトビール」を表現した。しっかりとした苦みがありながら、柑橘(かんきつ)のような爽やかな香りが漂うバランスの取れた味わい。国産ビールなどの品評会「ジャパン・グレートビア・アワーズ(JGBA)2020」で金賞に輝いた看板商品でもある。
ブルワリーは酒類卸の安井商店(同町)が運営する。2008年ごろ家業に戻った安井さんが、卸業の将来に危機感を抱き「違う柱を構築したい」と新事業を模索。14年、旅行で訪れたハワイのスーパーで、棚一面にクラフトビールが並んでいる光景を目にし、その種類の多さに衝撃を受けたのが転機になった。それから全国各地のビール醸造所を巡り、講習会や書籍で勉強を重ね、18年にオープンした。今年1月にはウイスキー製造免許を取得。今後、製造販売に乗り出す。
客の反応が直接返ってくるのは、卸業では味わえない喜び。良い評価はもちろん、悪い評価も受け入れ、常に改良を続け品質の向上に努めている。「(商品は)完成形であって、完成形でない。それがJGBA金賞のペールエールであっても」と笑った。
■お出かけ情報
さかい河岸ブルワリー
▽境町1341の1 道の駅さかい内
▽営業日は土曜、日曜、祝日
▽営業時間は午前10時~午後4時(荒天時は早じまい)
▽(電)0280(87)0022(安井商店)