800匹4年ぶり悠々 群馬・神流川で鯉のぼり祭り
群馬県神流町万場の神流川沿いで、地域住民がこいのぼり800匹を揚げる春の風物詩が4年ぶりに戻ってきた。神流川の上空をこいのぼりが悠然と泳ぐ「鯉のぼり祭り」は、全国で開かれるこいのぼり掲揚行事の先駆け的存在。大勢の観光客が訪れ、人口約1600人の小さな町は1年で最もにぎわう。一方、行事の担い手不足が懸念され、中高生や町民ボランティアの協力は欠かせない。関係者は「町の一大イベント。この先も続けていきたい」と決意を新たにしている。
4月中旬、こいのぼりひもの付け替え作業に集まった町民は苦笑していた。「やり方、忘れちゃったな」。落下防止のために重要な作業だが、取り組むのは久しぶり。恒例行事はコロナ禍で中止され、こいのぼりの掲揚もなくなっていたためだ。「この時期に揚がっていないと、やっぱり寂しかったね」。4年ぶりの掲揚を前に、町民の手に力が入っていった。
祭りは1981年、当時地元でボランティア活動をしていた「かたる会」が、家庭で揚げなくなったこいのぼりを住民から集め、1本のワイヤロープに100匹を掲げたことから始まった。全国のこいのぼりの掲揚行事の先駆けと言え、掲揚数のギネス記録に挑戦した際は、テレビ局の取材ヘリが押し寄せたこともあった。川の対岸にある山の上から階段状に並ぶのも特徴だ。
現在はワイヤロープ10本に垂れ下がる800匹が町の上空を彩る。期間中は例年2万5千人が町を訪れる。田村利男町長も「町を知ってもらう機会」と捉え、こいのぼりの新調費用として町が50万円を負担。町を挙げて盛り上げてきた。
一方で懸念もある。行事を一手に担っていた「かたる会」の会員は、かつて35人ほどいたが半減。40~50代を中心に運営してきたが、60代以上のOBの手も借りている。同会の松村健司会長(51)は「会に若手が入らず、町民の協力なしに続けられない」と継続の難しさを明かす。
新たな担い手の育成にも取り組む。今月23日の掲揚作業には、初めて参加する中里中3年の黒沢美緒さんと新井美結さんの姿があった。「小さい頃からこの時期になるといつの間にか揚がっていた。いろいろな人の苦労があったんだ」。元気に泳ぐこいのぼりをしみじみ見つめていた。
掲揚は5月7日まで。3~6日は「鯉のぼり祭り」(同祭実行委員会主催)が開かれ、町民が飲食ブースなどを出店する。イベントステージは出さず、例年より規模を縮小する。問い合わせは実行委(☎0274-57-3305)へ。
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