「いってらっしゃい」と見送るラーメン店 根本厚志さん(46)、恵子さん(47)

茨城新聞
2016年8月25日

「いってらっしゃい」

ラーメンを食べ終えのれんをくぐると、背中越しに声。一瞬「何事か」と振り返ると、店主の厚志さんが優しくほほ笑んでいる。特別威勢がいいわけではない。でも何か「よし、頑張るぞ」という気持ちが湧いてくる声。

「ラーメンの修業中につらくてくじけそうになった時があった。お客さんの中にも仕事で同じ気持ちに沈んでいる人がいる。自分の経験から、そうした人たちにも頑張ってほしいという思いから、声掛けを始めた」

妻の恵子さんも、初めはこの声掛けになじめなかったという。「でもだんだん分かってきた。彼はここを自分の家のような、居心地のいい店にしたかったのだと。だから『ただいま』と言って入ってくるお客さんも出てきた」

2人が結ばれ、かすみがうら市稲吉で「らーめん こうや」を始めて10年。お互いに支え励まし合ってきたからこそ、続けられたと感じている。そして何よりも、店に来てくれた人たちに感謝する。

「ゼロからのスタートが、どれだけ大変か身に染みた10年。でも必ず助けてくれた人がいた。『人に感謝』を教えられた10年でもあった」

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