個性的な一杯生み出す  栃木マイクロブルワリー(宇都宮)

下野新聞
2021年8月12日

 宇都宮市中心市街地を南北につなぐ通称・宇商通り。その一角にある「栃木マイクロブルワリー」の醸造スペースは、わずか7坪(約23平方メートル)ほどしかない。社長の横須賀貞夫(よこすかさだお)さん(55)は「おそらく日本で最も小さいブルワリー」と笑うが、ここからニラやハバネロなどを使ったひときわ個性的なビールが生み出されている。

 横須賀さんとビールとの出合いはおよそ25年前。酒税法が改正され、全国で小規模ブルワリーが続々とオープンしていた時期だった。当時はブルワー(ビール職人)は珍しかったこともあり「いつかは自分の作るビールをたくさんの人に味わってほしい」と憧れを抱くようになった。

 県内でのブルワリー立ち上げに携わり、ビール醸造から飲食店経営、営業スキルを10年以上かけて身に付け、2008年に独立した。

 「自由で面白い・楽しいビールを造る」をモットーに、個人や飲食店向けにオリジナルビールの受注・生産を主軸に置く。いわゆるクラフトビールのブルワリーでも、一度に数百~数千リットルを仕込めるたるを用いるケースが多い中で、60リットルの超小型のたるを使用。20リットルから生産可能と小回りが利くからこそ、ペールエールやピルスナーといったビアスタイルにこだわらず、横須賀さんらしさの強い一杯を生み出している。

 カンピョウやイチゴ、フキノトウといった季節の農産物はもちろん、ギョーザやタガメといった他ではまず使わない食材の使用にも挑んでいる。うわさを聞きつけた農家が珍しい野菜を使ってほしいと売り込んでくることもしばしば。「ビールも個性がないと生き残れない。リクエストを聞いて仕込むのでネタは尽きないし、命名もしてもらう。お客さんもビール造りにどんどん参加してもらっている」。

    ◇    ◇

 小規模ブルワリーの先駆けとして、新規参入者の育成もライフワークにしている。ブルワリー立ち上げを目指す人を後押しするため、醸造や品質向上、運営のノウハウを惜しみなく伝授。指導を受けようと、全国各地から集まってくるというのだから驚きだ。

 16年には「タウンマイクロブルワリー協会」を結成。地域密着型の小さなブルワリーの連携強化にも取り組んでいる。

 今年春からは「B-GARDEN」と題して月2回(土日)、店舗隣の屋外スペースを開放し限定生ビールなど提供。常連客だけでなく近隣住民や通りがかりの人も立ち寄ることが増え、幅広い客層にPRする場になっている。

 「県内ブルワリーがそれぞれ県産大麦を使ったビールを仕込むとか、他県のブルワリーとどちらがおいしいか競争するなど、栃木のクラフトビールの特徴を生かして仕掛けていきたい」。新型コロナウイルス禍で飲食業が苦戦を強いられる中でも、横須賀さんはビールの楽しさを伝えることに余念がない。

 【メモ】宇都宮市東塙田1の5の12。8月中はテークアウト販売のみ予定、午前11時~午後8時で随時受け付け。月、火、水曜は仕込みのため休み。ホームページで要確認。瓶詰めは吉田屋酒店、日野屋酒店(日光市)、月井酒店(那須町)で購入できる。(問)028・622・1314。

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