潮来あやめまつり 茨城・神栖の大学生、木村さん 娘船頭 最速デビュー 天性の素質で技術習得

茨城新聞
2021年6月19日

客から一転、2週間で船頭に-。茨城県潮来市で開催中の「水郷潮来あやめまつり」に合わせて運航している「ろ舟」で、今月デビューしたばかりの木村蒼依さん(19)=神栖市高浜=が見事な操船を見せている。木村さんは5月末、あやめまつりを観光で訪れたことがきっかけで娘船頭に憧れ、直後に申し込んだ。「センスの塊」(担当者)という天性の素質で、通常3カ月はかかるという訓練をわずか4日間で終え、客を迎えている。

大学1年生の木村さんは、「コロナ禍で遠出ができないので、近場に出掛けよう」と5月30日、家族であやめ園を訪れた。初めて訪れた同園でろ舟に乗ったところ、擦れ違ったろ舟をこいでいた娘船頭の姿が目に留まり、「とても格好良かった」と一目ぼれした。

昔から「思い立ったらすぐ行動に移す」という木村さん。その場で娘船頭になりたいと伝え、翌日には履歴書を持参。翌週には乗船下船の補助をしながら訓練が始まった。

ろ舟操船の技術習得は通常、3カ月はかかるという。しかし「最初から真っすぐ動かすことができた」と、天性の才能を発揮。練習は6月5、6、11、12の計4日間、1日当たり約1時間という驚異的な短さでこつをつかんだ。先輩船頭による試験を6月13日にパスし、同日、船頭デビューを果たした。実質4日間で試験をクリアしたのは「史上最速」という。

水郷潮来ろ舟保存会の坂田博さん(56)は「こんなにセンスの良い子は見たことがない。デビュー初日は10回お客さんを乗せてもケロッとしていた。何より、ろ舟に興味を持ってもらえたことがうれしい」と目を細める。

木村さんは、これまであまり訪れたことがなかったという潮来について「みんな家族のように温かく迎えてくれる」と魅力を話す。船頭の仕事に関しては、「お客さんとの交流がすごく楽しい」と笑顔を見せた。

あやめまつりは20日で終了。木村さんは19、20の両日、娘船頭としてろ舟の運航をする予定という。今年は新型コロナウイルス対策のため、名物の嫁入り舟は中止となった。「来年は嫁入り舟の船頭を務めたい」と意気込む。将来は自身も嫁入り舟の花嫁になりたいとして、「自分の時には白無垢(むく)でろ舟をこぎたい」と目を輝かせた。

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