常陸太田産卵で「おしゃらぐプリン」 県央県北の農家など 風味生かした優しい味、里山知るきっかけに

茨城新聞
2021年2月23日

茨城県内里山の魅力を発信しようと県央や県北地域の農家らでつくる民間団体「おしゃらぐ農園」は、メンバーが生産する卵を使ったプリンの販売を始めた。同農園では「里山と町の懸け橋として、農園体験や民泊など里山を訪れてくれる人を増やす入り口にしたい」と洋菓子をきっかけとして同農園の活動を多くの人に広めたい考えだ。

■水戸で販売

プリンは「茨城おしゃらぐプリン」と名付け、水戸市内の飲食店「洋食屋 花きゃべつ」で販売を始めた。材料の卵は、同農園メンバーで常陸太田市小菅町の農家、北山郷子さん(49)が生産。農場の標高より上に住居がなく、自然の沢水を与えることができるなど鶏に優しい環境で育てる。黄身の色が薄く、プリンの見た目が白くなったという。

ほかに、使った材料は水戸市産の蜂蜜など計5種類のみで、無添加やオーガニックで素材の風味を生かした優しい味が特徴だ。一方、お好みでかけるカラメルは、バニラとエスプレッソで大人向けに仕上げた。

おしゃらぐ農園は、県が2019年度に開催した農村地域活性化人材育成講座「いばらきアグリCoラボ」の受講生有志が設立。メンバーは大子や常陸大宮、常陸太田、水戸、笠間、城里の6市町で里山地域に住む9人で、専業農家のほか、飲食店を経営する兼業農家や食品加工業、木材加工、デザイナーなどの異業種が集まった。

おしゃらぐは茨城弁で「おしゃれ」を意味する。1月まで大子町の地域おこし協力隊を務めた同農園の飯田萌美代表(31)は「里山の暮らしを大切にしている生き方もおしゃれではないか」と提案したいという。

これまでメンバーの農産物を販売するマルシェや芋掘り体験、笠間市の里山の梅の収穫とシロップ作りを行うワークショップなどを開催。会員制交流サイト(SNS)でも料理や里山の暮らしを発信する。

今回は、「洋食屋 花きゃべつ」の嶋田淳店主(32)が、北山さんの卵にほれ込み、商品化していたものを改良。同農園に共感してプリンを通じた発信を提案し、メンバーも試食やラベルのデザインを一緒に検討し完成させた。

店内や持ち帰りで楽しめる「茨城おしゃらぐプリン」=水戸市南町

店頭とネット通販で販売している。価格は1個380円(税込み)で、セットは3個と6個入り。今後、兼業農家で飲食店「笠間茶屋」を経営する畑岡久美子さん(52)らメンバーが生産する季節の食材を使用したプリンも販売していきたいという。新たに同農園の10人目のメンバーとなった嶋田店主は「自然や空き家が増えて限界集落になるのはもったいない。店は今年で40年目を迎える。発信力など手助けできたら」と話す。

飯田代表は「里山の文化を守りながら伝えていきたい。メンバーが広域から集まっていることを生かした活動ができれば」とし、今後は野菜ボックスの宅配なども検討したいという。

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