巨大断面に圧倒 笠間の「石切山脈」 「想石」の採石場巡るツアー始まる

茨城新聞
2020年11月21日

稲田石の採石や加工販売を手掛ける想石(そうせき)(笠間市稲田、川畑真彦社長)が新会社を設立し観光事業に乗り出した。採掘が進む現場の見学ニーズが増えており新たに採石場ツアーの企画運営に参入。笠間市産のクリを使ったカフェも運営し、「石切山脈」を笠間の新たな観光スポットとして打ち出すことで、地元の観光活性化につなげたい考えだ。川畑社長は「土産品の販売のほか、笠間焼を体験できるブースを作りたい」と意気込む。

ツアーは、現在採掘が進む採掘現場や雨水がたまり湖となった採石場跡を高さ65メートルの断崖から眺めることができる。同社が用意する車か団体バスで専門ガイドと共に巡る約1時間のコース。平日に限り、運が良ければ掘削作業を見ることができるという。

採石場跡の断崖から記念撮影。切り立つ岩壁は、水面まで高さ20メートルを超える=笠間市稲田

同社は、創業から120年にわたり、稲田石の採掘から販売まで一貫して行う。東京の近代化に伴い、国会議事堂や最高裁判所など大型建造物に使われてきた。約20年前から安価な中国産が輸入され始めたため、国産の需要が低迷しており「石はもっと身近なものだとPRしたい」と川畑社長。

2017年に採石場跡が会員制交流サイト(SNS)で話題になり、昨年は約2万5千人に上る見学者が訪れた。見学者の会社敷地内への出入りが多くなったことから、安全確保のため今年から入場料を設けた。採石の仕事と見学者対応の両立も難しくなっていたことから、観光事業に特化した新会社「U-A」(ウーア)を6月に設立。採掘現場見学の要望を受けた場合のみ有料案内すると好評で、今月からツアーとして事業化した。

ツアー開始と同時に、採石場跡近くにオープンテラスのカフェ「U-Aカフェモンブラン」を開業。看板メニューは、笠間市産のクリを使ったモンブラン。県外から訪れる見学者に地元の特産品をPRしようと、クリのペーストを細く絞り、風味を生かせるようにした。価格は千円(税込み)。若い世代を意識し、カップのデザインや石の皿にもこだわった。特注した稲田石の石臼で客が豆をひき、店がドリップするコーヒーも提供する。価格は2人前で千円。営業時間は午前9時~午後4時。不定休。

想石の従業員で経理担当だった中村えつ美さん(32)が同社社長に就任し、事業企画に取り組む。観光地化が進む栃木県の大谷石採石場を参考にするなど事業化に当たり研究してきた。今後、石窯で焼くピザの提供を始める予定で材料に県産品を使っていきたいという。中村社長は「石には暗いイメージがあると思う。見方を変えて来てもらえるようにしたい。ここを拠点に地元を知ってもらえれば」と前を見据えた。

ツアーは要予約。料金は千円(中学生以下500円)。1日4回実施。希望日の1週間前までに(電)0296(74)2537、または公式サイトから申し込む。採石場跡は一般入場料300円(中学生以下無料)が必要。

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