世界かんがい施設遺産 北茨城の農業用水路 「十石堀」を登録 「堀割」の技術に評価

茨城新聞
2019年9月5日

歴史的価値のある農業用水利施設を登録する「世界かんがい施設遺産」に、北茨城市中郷地区を流れる農業用水路「十石堀(じゅっこくぼり)」が選ばれた。同遺産への登録は県内初。インドネシア・バリで開かれている国際かんがい排水委員会(ICID)の理事会で4日発表され、現地からの報告を受けた地域住民ら約150人が同市役所でくす玉を割るなどして祝った。

十石堀は1669年、住民が水不足に苦しんでいた松井村(現在の同市中郷町松井)の庄屋、沼田主計が中心となり建設。延長は約15キロ。現在も周辺住民が農業用水や防火用水、飲料水として利用する。

市などによると、二つの沢を導水路「堀割」でつなぎ水源開発を行った技術や、農民が自ら掘削したといった要素が評価につながったとみられる。

地元住民らでつくる「十石堀維持管理協議会」の小林昇会長は現地で発表を聞き、「登録されたことは大きな喜び。世界に認められた十石堀に誇りと責任を持ち、継承していきたい」とコメントを出した。

同協議会は2017年7月、同遺産への登録申請を決定。18年1月に申請書を提出したが国内審査を通らず本部への申請が見送られた。小型無人機ドローンによる撮影や測量、地形調査などを行って今年2月に再申請し、5月に国内審査を通過した。

4日午後1時すぎ(日本時間)、電話で報告を受けた豊田稔市長が市役所で結果を待ち受ける人たちに登録決定を伝えると、拍手が湧き起こった。豊田市長は「皆さんの力があって施設遺産になった。(見学者の受け入れに向け)安全な施設を早急に造り上げなければいけない」と述べた。

松井地区の根本俊区長は「350年間の長きにわたって、先人たちが十石堀を守ってきた。次世代につないでいくことをお約束したい」と話した。

同遺産は、かんがい農業の発展に貢献し技術的に優れた水路やせきなどを保存するのを目的にICIDが創設した。建設から100年以上の施設が対象。今回、十石堀と同時に、国内3カ所のかんがい施設が登録され、国内で計39カ所となった。

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