蚕神の文字塔復活 東日本大震災で転落 安中

上毛新聞
2019年6月6日

 養蚕信仰の対象となった安中市西上秋間の「蚕神」の文字塔が4日、ボランティア団体「富岡製糸場世界遺産伝道師協会」(近藤功会長)などによって修復された。2011年の東日本大震災により石塔の本体が台座から崖下に転落したとみられる。同会の町田睦さん(79)は「今回の修復をきっかけに、他の地域でも破損などが放置されている蚕神の修復や保存の動きが広がれば」と期待する。

 文字塔は高さ約100センチ、幅約40センチ。正面には「絹笠大明神」と刻まれている。県内全域で降霜被害が発生し、養蚕が打撃を受けた1893(明治26)年に建立された。3メートルほどの小高い崖上にあったが、大震災の影響で本体が崖下の耕作放棄地に転落したとみられ、雑草に埋もれたままになっていた。

 同会のメンバーや地域住民ら11人は、市文化財保護課職員の指導を受けながら作業に取り組んだ。本体を崖下から引き上げて台座に据え、接合部分をコンクリートで補強して元の姿に戻した。

 蚕神は、養蚕が天候などに左右され不安定だったため、農家が信仰し心のよりどころにしてきた。同会の調査では県内で456件の蚕神が確認されており、一部は破損や倒伏したまま放置されているという。

 町田さんは「各地で蚕神への関心が高まり、先人が蚕に託した思いを多くの人に感じてもらえればうれしい」と話した。