県近代美術館開館30周年展 モネなど印象派72点

茨城新聞
2018年11月8日

茨城県近代美術館の開館30周年を記念した特別展「ポーラ美術館コレクション-モネ、ルノワールからピカソまで」が水戸市千波町の同館で開かれている。国内随一の質の高さを誇るポーラ美術館(神奈川県箱根町)の西洋美術コレクションから72点を厳選。印象派の色彩鮮やかな名品と共に、19世紀から20世紀にかけてのフランス絵画史と魅力をたどる展示構成で、「近代美術の夜明け」を紹介している。

印象派は19世紀半ば以降にフランスで誕生した。産業革命で近代化が進み、社会が急激に変貌する中、その流れに乗るように、新しい価値観と美意識を提示。伝統的な主題だった神話画や宗教画に背を向けて、日常の娯楽、平凡な風景、流行のファッションなどをモチーフに「今」を描いた。

作風は光量に重点を置く。形態の明確な描写よりも、それを包む光の変化や空気感など、一瞬の印象を切り取る。自然の光の効果を明るい色彩で画面に写し出そうと、印象派の画家たちは混色を避け、原色や原色に近い色を使って大胆なタッチで描いた。

モネはその印象派の代表格とされる。屋外の光に包まれた人物像の表現を追求。パラソルを差し、白いドレスを身に着けた女性像を繰り返し描いた。伝統的な絵画のルールに反して、顔の表情など人物の特徴を描写することもなかった。

モネが自分の家族の一場面を描いた「散歩」。草木も散歩する人物たちも同様に日の光を浴び、多彩な色彩を帯びて一体化している。また中景に配置された息子は、最小限の筆触で示されている。

モネと共に印象派の一時代を築いたルノワール。モネが風景画を手掛けたのに対し、ルノワールは女性の肖像画、裸婦像など人物画を描き続けた。明るい色彩と柔らかに溶け合うような筆致は、水戸市出身の洋画家、中村彝(つね)の制作に大きな影響を与えた。

室内での休息の場面を描いた「休息」。裸婦がベッドに横たわり、お茶の給仕を受ける。ルノワールが得意とする流麗な筆致で薄塗りが施され、女性たちに柔らかなボリュームが与えられている。

印象派の画家や作品は、認知度と人気の高さ、親しみやすさにおいて群を抜く。理屈や深い知識より先にただ見ることができ、美術に触れる楽しさを改めて教えてくれる。

同館主任学芸員の澤渡麻里さんは、「印象派は社会の変化がなければ生まれなかった『近代の申し子』。印象派をじっくり鑑賞して理解すると、それ以降の20世紀の絵画や現代アートも深く楽しむことができる」と話した。

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会期は18日まで。午前9時半~午後5時。13日の「県民の日」は入館無料。月曜休館。

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