水戸、弘道館 東湖の書「麗澤」公開 死前日、幕府儒官に贈る

茨城新聞
2018年10月2日

水戸藩の学者で徳川斉昭のブレーンだった藤田東湖が安政の大地震(1855年10月2日)で圧死する前日に、幕府儒官の芳野金陵に対し贈った書「麗澤」が1日、水戸市三の丸の弘道館で特別公開された。

幕府から改革政治の行き過ぎをとがめられた斉昭と同様に、東湖は44年に蟄居(ちっきょ)を命じられた。52年に自由の身となり、53年に江戸勤めとなる。この頃から芳野金陵らと定期的に懇談を重ねた。

当時の記録によると地震前日は芳野金陵宅に集まり、囲碁を打ち、酒を酌み交わしながら午後11時まで過ごしたという。東湖は大地震の時、江戸・小石川の水戸藩邸の長屋で、母を助けるため抱きかかえて外に出ようとした時、はりが頭上に落ちて圧死した。

展示解説した小圷のり子主任研究員は「麗澤には友人が互いに助け合いながら学ぶことという意味がある。絶筆に近い書と言える」と紹介した。弘道館では日誌が毎日付けられていたが、「地震後は10日間記述がなかった。水戸でも大混乱に陥っていることが分かる」と解説した。

書は芳野の子孫から2016年に弘道館に寄贈され、後に修復された。

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