静と動モチーフ 多様な現代美術 ハラミュージアムアーク

上毛新聞
2018年8月11日

人や物の動き、あるいは静止した状態をテーマとした作品を集めた展覧会「うごくとまる」が9月30日まで、ハラミュージアムアーク(渋川市)で開かれている。止まったままの映像や動く彫刻、動いているように見える絵画など約40点を展示。現代美術の表現の幅広さ、多様さを実感できる。
展示室の中央に置かれた木製家具のような作品。壁にはその作品に乗った女性と、女性が取るポーズの基になった写真を並べて投影する。国内外で活躍する泉太郎さんの「くすぐられる夢を見た気がする(雲が落ちる)」(2017年)だ。
写真は激しく動くサッカーの一場面を捉えたものだが、写真では止まって見える。その動きを木製家具のような作品を使って再現。現実のスピード感や空気感、現実と再現空間のギャップを感じられる。
実際に動く作品もある。キネティックアート(動く芸術)の巨匠、ジャン・ティンゲリーの「ペリカンの卵」(1958年)はそんな作品の一つ。一見すると抽象的なオブジェのようだが、鑑賞者が近づくとパーツが動きだし、別の形になって静止する。動きによって印象が大きく変わることが楽しい。
特別展示室「觀海庵(かんかいあん)」では、9月30日まで「動と静」を開催している(前期は8月23日まで)。
中国・戦国時代の道家、列子が天空を浮遊する姿を描いた雪村の「列子御風図」(室町時代)は、長い顎ひげや身にまとった衣、周囲のササが右上方へなびいているように描くことで、吹き抜ける風を表現した。
雲間から姿を現した龍、体を反らして地面を踏みしめる虎を描いた狩野探幽の「龍虎図」(江戸時代)は、墨のにじみで黒い雲や刻々と変化する雲の動感を表現。力強く、壮麗な狩野派の様式を、余白を生かした画風に一新した作品とされる。
現代美術に限らず、「動と静」は古くから多くの作品のモチーフとなっていたことがうかがえる。
木曜休館(8月は無休)。問い合わせはハラミュージアムアーク(☎0279・24・6585)へ。

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