「土用の丑」前に守る味 潮来の老舗日本料理店

茨城新聞
2018年7月17日

20日と8月1日は「土用の丑(うし)の日」。ウナギを出す飲食店にとっては最も忙しい時期だ。そんな中、潮来市に秘伝のたれを使った伝統のかば焼きを出し続ける店がある。「割烹 清水屋」は、江戸時代創業と伝わる老舗で、かつては版画家の川瀬巴水(はすい)や清朝最後の皇帝・溥儀(ふぎ)の弟で書家としても知られる溥傑(ふけつ)らも訪れている。現在の店主は8代目の大崎一彦さん(71)。ウナギの仕入れ値が高騰する中、「のれん(の歴史)があるから続けていられる」と、厨房に立ち続けている。

潮来市永山の常陸利根川近く、緑に囲まれて店舗がたたずむ。元々は18世紀、同市上戸に構えたはたごが始まりとされる。旧店舗は1864年の天狗党の乱に際し、天狗党の一派が宿泊。そのことから佐倉藩の銃撃を受け、弾痕が残る柱が現在の店舗玄関脇に保存されている。川瀬巴水は清水屋に滞在して「牛堀」の制作などに取り組んだほか、溥傑は1974年の来日時に一泊し、書を残している。

大崎さんは1967年、父親の体調不良などもあって8代目を継いだ。かつては割烹や旅館業などを手広く手掛けていたが、バブル崩壊などもあり人員を整理。現在は主に川魚料理を提供している。

ウナギは養殖と天然を選べ、100年以上伝わる秘伝のたれを使い、丁寧に焼き上げる。天然のウナギは霞ケ浦や北浦で捕れたもので、「天然のウナギは川エビが大好物。だから肉も香りが良い」と話す。

今年で72歳を迎える大崎さん。力仕事も多い上にウナギの仕入れ値も高騰。「体力的にはあと数年で厳しくなるかもしれない」としながらも、「『20年ぶりに来たよ』とか『昔おじいさんに連れられて来た』とか言う方もいらっしゃる。『のれん』のためにも、できる限りは続けていきたい」と話した。 

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