かすみがうら・歴史博物館 大日本史、水戸学に光

茨城新聞
2018年5月26日

水戸藩第2代藩主、徳川光圀が編さんした「大日本史」と近世や近代の教育に光を当てた企画展が、かすみがうら市坂の歴史博物館で開かれている。大日本史の精神を基にした江戸時代の水戸学や、水戸学から影響を受けた教育を紹介。同市出身の実業家ら人物も解説した。8月26日まで。

企画展は、明治維新150年記念として開催。昨年、大日本史の刷り本が同館に寄贈されたことを受け、企画した。

大日本史は、歴史から学ぶ学問として光圀が手掛けた。光圀の没後も編さんは続けられ、約400巻が完成したのは明治時代になってから。勤王思想や明治の教育勅語にも影響を与えた。

会場には、寄贈された大日本史のほか、光圀や第9代藩主、斉昭の人物像を紹介。弘道館記碑の拓本も展示した。記碑の原本は、水戸市の弘道館にある水戸学の理念を記した碑で、諸藩の大名に広く知らせるため、縮刷版の拓本が作られた。拓本は今年2月、水戸市民から寄贈を受けた。状態が良く、文字がはっきり見えるのが特徴という。

教育に関する展示では、水戸藩の教育に焦点を当て、各地に藩が設置した郷校(ごうこう)や寺子屋で水戸学をはじめとした学問が盛んに行われ、多くの優れた子弟を生み出したことを示した。

かすみがうら市出身の人物も紹介。高島嘉右衛門(1832~1914年)は、材木商から出世した実業家で、横浜で鉄道事業やガス灯事業を展開した。嘉右衛門が興した占い、高島易断や、横浜市の高島町は今にその名を残している。

折本良平(1834~1912年)は明治時代に帆引き船を発明し、霞ケ浦漁業の花形に発展させた。

畜産学者として知られる飯田吉英(1876~1975年)は、ソーセージ製造の実験を行い製造方法を確立。ハムやソーセージ会社をつくる指導を行い、日本のハム会社発展を支えた。

これら3人は水戸学を学び、自らの精神や生き方を築いた。同館の千葉隆司学芸員は「若き日に人間として教養、生きる力を身に付けた教育の大事さは、現代社会にも伝わるのでは」と語った。 

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