《食いこ》永寿堂(高萩市) 薄く軽やか八千代おこし

茨城新聞
2018年2月19日

創業100年を超える高萩市の菓子店、永(えい)寿(じゅ)堂。長年受け継がれてきた「八千代おこし」は、香ばしくさくっとした食感と、おこしにしてはソフトな歯応え。天日干しなど手間暇をかけて作られ、高萩土産として人気が高い。

永寿堂は1913(大正2)年に創業された。社長で3代目の沼野辰三さん(77)によれば、大阪でおこしの専門店を開業していた初代が明治時代に炭鉱事業がきっかけで高萩市に移った。その後、初代は炭鉱事業から退いたが同市に残り、店を開いた。八千代おこしは大正天皇の即位記念に初代が考案。「君が代」の歌詞「千代に八千代」から名付けたと伝えられている。

おこしの材料は県産のもち米。もち米をふかし「干し枠」と呼ばれる木枠に広げて天日干しする。パン粉を作るような機械で粒に戻す。さらに干し枠に薄く均等に広げ、天日で干し「干し飯(いい)の状態にする」。その間、2週間ほど。「夏に雨が多かったので、この季節は干し上がるのを待って作っている状態」と沼野さん。店の奥にある工場の前で、天日干しされる。青空の下、もち米の白さが際立っていた。「天日干しは手がかかるが、短時間でできる機械の火力乾燥だと、表面にひびが入り細かくなってしまい、生地として使いにくい」

干し飯の状態にしたもち米をいって「はぜ」を作り、水あめと砂糖を混ぜた糖蜜、落花生と合わせ、圧延機にかけ薄く延ばす。「薄いことが八千代おこしの原点」とはっきり。「薄手にすることでやわらかめの歯応えを生み出す。機械だけでは表面をつぶしてしまう。人の手を使わないと薄くならない」

2011年、東日本大震災で店舗が被災。翌年4月に再建した。これを機に「日持ちする」八千代おこしに加え、「日持ちしない生菓子」に力を入れるようになった。お薦めは「はぎまろワッフル」。高萩市のキャラクター「はぎまろ」の顔がついた、ふわふわのワッフルに、クリームをはさんだ。クリームはカスタード、イチゴみるくなど10種類がそろう。八千代おこし、はぎまろワッフルは市のブランド推奨品。

■お出かけ情報
永寿堂
▼高萩市安良川679
▼営業時間は午前9時~午後7時
▼定休は日曜
▼(電)0293(22)2002

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