《食いこ》 黒澤醤油店(ひたちなか市) 伝統的製法でスイーツも

茨城新聞
2017年9月24日

ひたちなか市の黒澤醤油(しょうゆ)店は1905(明治38)年創業。4代目の社長、黒澤仁一さん(44)は「伝統的な醤油造りをベースに新たなチャレンジ」として、たれやつゆなどの加工品、「醤油スイーツ」などの商品開発に力を入れている。

仕込み蔵に人の背丈を超える大きな杉の木桶(おけ)が並ぶ。耳を済ますと、もろみが発酵する音が聞こえてきた。長年使われてきたという木桶を使い、蒸した大豆といった小麦で作った麹(こうじ)に塩水を混ぜたもろみを発酵させ醤油を造る。「古式醸造で、普通は3カ月から半年のところ、四季を通し1年かけて造る。寒い時期に仕込み、ゆっくり発酵させることで塩なれし、うま味の数値が上がる」

「(仕込み蔵には)酵母菌と乳酸菌がすみついている。これがなければ醤油はできない」。建て替えの際も代々受け継いできた仕込み蔵は残した。菌によって、塩味やうま味、酸味、甘味、香りなど豊かな風味が引き出される。

商品構成は濃い口醤油「富士仁(ふじに)」や再仕込み醤油「醤蔵(ひしおぐら)」、県産の大豆と小麦で造る「仁右衛門(にえもん)」など。塩水の代わりに醤油を使い二段階で仕込む「醤蔵」は全国醤油品評会で優秀賞を受賞した。漬物醤油「あわ漬」や「焼肉のたれ」など加工品も多彩にそろう。製品はラーメン店や飲食店などにも納める。

醤油を使ったスイーツも開発した。仁右衛門を練り込んだ「醤油プリン」と「醤油ソフトクリーム」は「角が取れた醤油らしさが出る。ほかのではこの味にならない」。世代を超えて人気という醤油ソフトは「何十回も試作を重ねた。飽きの来ない味」。「甘酒醤油ソフトクリーム」は砂糖を使わない麹の甘酒とよく合う。「醤油麹シフォンケーキ」は市内の専門店と共同で作り上げた。

敷地内にある直売所兼展示室は蔵を改装した。醤油ソフトはここでしか食べられない。国営ひたち海浜公園から足を延ばす客も多い。「醤油は調味料。主役にはなれないが、食材をさらにおいしくする重要な役割がある」。これからも醤油の魅力を伝えようと意欲的に取り組んでいく。

■お出かけ情報
黒澤醤油店
▼ひたちなか市馬渡1260
▼営業時間は午前9時~午後6時
▼定休は日曜・祝日。5、8、10~12月は問い合わせ
▼(電)029(272)3776

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